Secret love.
「良いじゃん。ただの仲良い同期だってこのくらいするし気にすんなって。」

「そんなわけあるか!」


及川くんに手を掴まれてたいやきに目掛けて口を開けて近付いていく。私もグッと力を入れて食べさせない様にするも、全然引いてはくれない。

周りから見たらじゃれている様にしか見えないのかもしれないけれど、私は本気でたいやきを守っているし、及川くんも意地になっている。


「諦めてってば…!」

「いいじゃん!」

「自分で買いな!」


間接キスなんて見られたらと思って拒否していたのに逆に目立ってしまっている。ただの同期のじゃれ合いだと見られている様で先輩方に「可愛い~!」なんて茶化されてしまっているが、こっちは本気だ。


「いつもくれるじゃん」

「なっ…!」


そんなことないと急いで否定するべきだったのだろうけど、実際はいつも私からシェアをしたがって食べさせてもらうから何も言えなくなる。

固まっている隙に一口食べられてしまい「ああ!」と声を上げる。及川くんをジトッと睨みつけると暢気に「抹茶うま。」と口にしていた。

美味しそうに食べている及川くんは可愛いけど、今は可愛いなんて言ってる場合じゃない。


「弁償。」

「しゃあないな。何でも買ってあげる。何が良い?」

「ソフトクリーム」

「甘いのばっかじゃん。」

「家にも温泉まんじゅう買って帰るからよろしく。」

「うわ、図々しい。」


こんだけ強請ってもどうせ家で食べる時は一緒だ。その事実に気付いているのは私達しかいない。
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