Excessive love.
Prologue
この日は、人生で最悪の日だった。
別に、疑っていたわけじゃない。テーブルの上に置き去りにされた彼のスマホが、不意に短く震えた。光った画面に出た通知が、望んでもいないのに視界に飛び込んできた。
«りゅうくん、昨日は楽しかった~♡
今日は会えないのかな?寂しいよ~»
語尾に付くピンクのハートと、甘ったるい絵文字。
昨日の金曜日、飲み会で遅くなると言っていた彼の顔が脳裏をよぎる。
(…ああ、やっぱり)
心の奥が冷たく、硬くなっていくのがわかった。
送り主の名前はあみ。
相手はきっと、私の勤める会社の営業事務、姫野あみさん。彼女がよく経理課へ足を運び、私の恋人である加藤隆太とよく親しげに話しているのは知っていた。
愛嬌があって、計算高く、誰からも好かれる彼女。どこかで覚悟はしていたつもりだったけれど、いざ突きつけられると、呼吸の仕方を忘れそうになる。
「…あみって、姫野さん?」
リビングに戻ってきた隆太が、スマホを凝視する私を見て足を止める。
一瞬の沈黙。彼はあからさまに動揺し、泳いだ視線が宙を彷徨った。
「…見たの?」
「先に私が聞いているんだけど」
荒らげる声すら出なかった。ただ、静かな怒りが、部屋の空気を満たしていた。
隆太の顔から罪悪感が消え、徐々に開き直ったような、冷ややかな色へと変わっていくのを私は黙って見つめていた。
別に、疑っていたわけじゃない。テーブルの上に置き去りにされた彼のスマホが、不意に短く震えた。光った画面に出た通知が、望んでもいないのに視界に飛び込んできた。
«りゅうくん、昨日は楽しかった~♡
今日は会えないのかな?寂しいよ~»
語尾に付くピンクのハートと、甘ったるい絵文字。
昨日の金曜日、飲み会で遅くなると言っていた彼の顔が脳裏をよぎる。
(…ああ、やっぱり)
心の奥が冷たく、硬くなっていくのがわかった。
送り主の名前はあみ。
相手はきっと、私の勤める会社の営業事務、姫野あみさん。彼女がよく経理課へ足を運び、私の恋人である加藤隆太とよく親しげに話しているのは知っていた。
愛嬌があって、計算高く、誰からも好かれる彼女。どこかで覚悟はしていたつもりだったけれど、いざ突きつけられると、呼吸の仕方を忘れそうになる。
「…あみって、姫野さん?」
リビングに戻ってきた隆太が、スマホを凝視する私を見て足を止める。
一瞬の沈黙。彼はあからさまに動揺し、泳いだ視線が宙を彷徨った。
「…見たの?」
「先に私が聞いているんだけど」
荒らげる声すら出なかった。ただ、静かな怒りが、部屋の空気を満たしていた。
隆太の顔から罪悪感が消え、徐々に開き直ったような、冷ややかな色へと変わっていくのを私は黙って見つめていた。
< 1 / 142 >