Excessive love.
「そう」

「…そう。で、昨日は飲んで帰って来たわけじゃないのよね?」

「そうだね」


 責める気にもなれず、小さく溜息を吐き出した。
 ここで怒り狂って、泣き喚いて、何が変わる。

 感情をぶつける時間も、今の彼に対してはすべて無駄なような気がした。

 本当は今すぐ、この部屋からすぐに荷物をもって出ていきたい。だけど、深夜に荷造りをして今すぐ飛び出すのは現実的ではなかった。

 頭の中で、同期の川﨑(かわさき) 優花(ゆうか)の顔を思い浮かべる。彼女は彼氏と同棲中だけれど、今の私には、縋れる場所が優花の所しかなくて、そこを頼るしかなかった。


「どこ行くの」

「別れるでしょ? 別れる人と一緒には住めない。荷物は来週まとめて完全に私の物は無くすから、姫野さんをもし家に呼ぶようなことがあるなら、私の荷物が無くなるまで待ってくれる?」


 一度も彼の顔を見ず、必要なものだけを淡々とバッグに詰め込んでいく。今はとにかく、一刻も早く、この部屋から逃げ出したかった。


「そんな簡単に決められるんだね」


 背後から、低く、不機嫌そうな声が響く。
 これ以上、私に何を言ってほしいのかわからない。

 選択肢なんてなくしたようなものなのに、そんな風に追い詰めてきて、どれほどこの人は私を惨めにさせる気なのか。


「どういう意味?」

「四年も付き合って来て三年も同棲して、俺に何も思うことは無し?」


 信じられない言葉に、手が止まった。ゆっくりと振り返ると、そこには罪悪感にはもう微塵も感じられない太一の顔。


「浮気した人と付き合っていくつもりないから。これが答えよ」

「…実季っていつもそうだよな。最初から俺の事なんかいらなかったんだろ?」


 聞き飽きたその台詞に、もはや傷付くことさえなかった。今までも「実季は一人でいいもんな」とか、過去の恋人に言われることも何度もあったから。
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