Excessive love.
「新田さんは? 行くの?」

「…行かないといけない理由があって」

「何それ、かっけぇ」

「私の事になると返事適当になるよね、及川くん」

「いやいや、社員旅行にわざわざ行かなきゃいけない理由があるって格好良いじゃん。知らんけど」

「優花に別に社員旅行やめて二人で旅行行こうって提案してもいいのよ、別に」

「すみませんでした」


 即座に背筋を伸ばして謝罪する姿に、私は内心鼻で笑った。

 周りの社員はほとんど外回りで出払っており、私達の近くには誰もいない。だからこそ、こんな好き勝手な会話ができる。

 私も及川くんも今日は午後から外回り。私はこの後、優花とランチを済ませてからそのまま取引先へ向かう予定になっていた。

 及川くんとは営業課で六年もの付き合いになる。彼は話しやすく、親しみやすいし、何でも話し合えるほどの関係性にはなっている。

 彼が友人としての線を絶対に超えてこないし、超えようともしない信頼感があるからこそ、この気楽な距離感が保てていた。


「ちょっと説得してよ。川﨑さんが社員旅行来るように」

「嫌よ。優花しつこくされるの嫌いだし」

「新田さんのお願いならきっと来るよ」

「諦めたら?」

「そんな意地悪言うなよな」


 口では冷たく突き放しているけれど、本音を言えば私も優花に来てほしい。

 社内の人間関係はそれなりに良好に築いてきたつもりだが、やっぱり一番の親友である彼女がそばにいてくれるのが、何よりも安心だから。

 メールには部屋割りは二人一組、組み合わせは自由と記載がある。私なりに少しだけ、彼女を誘ってみようと思った。

 …及川くんがダメな事を私で聞くのかは疑問だけど。
< 30 / 142 >

この作品をシェア

pagetop