Excessive love.
「…何?」


 私が何も言えず、きっと違和感を覚えているのが顔に出てしまったのか、優花が問いかけてくる。


「あ、いや、何でもない。上って誰なんだろうって思っただけ。営業部の上司が人伝に仕事を与える事滅多に無いから」

「及川くんが嘘吐いてるってこと?」

「そうは言わないけど…、本当に急ぎの仕事だったのかなとか…。及川くんが優花を裏切る事はしないと思うし、大丈夫だと思うけど」


 私の言葉が気休めであることは、自分でも分かっていた。及川くんが優花に向ける視線に嘘がないことは、第三者の私から見ても明らかだけれど、事務が伝え忘れたというのがどうしても引っかかる。

 脳裏に、姫野さんの計算高い笑顔が浮かんだ。彼女は隆太一人に執着するようなタイプには見えない。万が一、彼女が及川くんにまでちょっかいを出しているとしたら…。

 これ以上不安を煽るような推測を口にするのはやめておいた。優花だって姫野さんのことは警戒しているし、及川くんなら上手くあしらっているはず。

 優花はまだ完全に納得した顔ではなかったけれど、無理に口角を上げて「…帰ろうか」と短く言った。

 私は小さく頷き、彼女の隣を歩き出す。

 街灯が照らす夜道。これからどうなるのか、週明けからどんな顔をして出社すればいいのか、不安は尽きない。
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