離縁を告げた夜、堅物御曹司の不器用な恋情が激愛豹変する
彼女が冷めた声で付け足した通り、今すぐにはパッと思い浮かばなかった。
俺たちは結婚式こそ両家の親の希望で派手なものを挙げたが、新婚旅行には行っていない。
『仕事が落ち着いたらにしよう』ともっともらしい理屈をつけ、悠花がどうしたいのかも聞かず勝手に先延ばしにしていたのだ。
今ならどんな手を使ってでも休みをもぎ取って悠花の望むところへ連れて言ってやりたいが、彼女が望んでいるのは思い出の場所――。
これまで愛情を示したこなかった俺にわかるはずはないと、悠花は初めから俺に期待していないだろう。
しかし、逆に言えばこれはチャンスだ。
俺が思い出の場所を覚えていれば、今度こそ愛情の証明ができる。全力で臨まなくては。
「わかった。当日まで楽しみにしておいてくれ」
「あてがあるんですか?」
「それは内緒だ」
口元に人差し指を立てて不敵に微笑んでみたものの、今のところいいアイデアは浮かんでいなかった。
訝しげに俺を見つめる悠花には、俺の嘘などバレているかもしれない。しかし、当日までには必ず、彼女の心が思い描く場所を探し当ててみせる。
今回は、誰の力も借りない。
餅は餅屋――悠花のことに一番詳しいのは俺であると、堂々と胸を張れるように。