離縁を告げた夜、堅物御曹司の不器用な恋情が激愛豹変する
俺は手を伸ばし、彼女の膝の上で軽く握られた拳をそっと握りしめる。顔を上げた彼女と視線を合わせ、ゆっくり語りかけた。
「だったら、わかってもらえるまで努力を続けるまでだ」
「努力……ですか? いったいどうやって?」
「手始めに、今度一日休みを俺にくれないか? 夫婦でどこかに出かけよう」
悠花が驚いたように目を見開き、長い睫毛を瞬かせる。
その頬にほんのりと赤みがさした気がするのは、俺の願望がそう見せているだけだろうか。
「どこかって、どこです……?」
「悠花は? どこへ行きたい?」
質問に質問で返すのは卑怯だろうかと頭の片隅で思いつつも、できることなら彼女の望みを叶えたくてそう言った。
悠花が俯いて悩んでいるようなそぶりを見せたので、真剣に考えてくれているようでうれしくなる。
「……思い出」
彼女の唇が、ふいにそんな言葉を紡いだ。
続きを促すようにその顔を覗くと、悠花は意を決したように顔を上げた。
「珀人さんが、私たち夫婦の思い出が詰まっていると思う場所に連れて行っていただきたいです。……たぶん、難しいでしょうけど」