私の婚約者は、嘘ばっかり〜クズだけど優しい彼〜
Fiance1.)32歳、嘘をつく

Lie1.)

衣咲(いさき)、あんたにお見合い用意したから」



山下衣咲(やましたいさき)、32歳。

久しぶりに実家に帰ったら母親から告げられた言葉に開いた口が塞がらない。

え、今何て言いました?
私の聞き間違いじゃなければ、お見合いって…

「こちらお相手の方よ、ガラスメーカーで有名な“リュイール”の社長の息子さん」

母のこうゆうところが苦手だ、私に息もつかせないほど続けざまに勝手に話を進めてくるところ。

「さすがにあんたも知ってるでしょ?」

まだうんともすんとも言ってない私に押し付けるように写真を出してくる。厳かな台紙に入った写真を渡されて開くのを躊躇した。

「リュイールのグラスはいいのよね、品があって美しくて。それであってあくまで主役は注がれた飲み物だと言わんばかりの控えめな佇まいも素敵なのよね」

「……。」

もうお見合いじゃなくてグラスの話になってるし。

たぶんこれはそうゆうこと、このお見合い写真を受け取った時点で私に拒否権はないってこと。
でも受け取らないって拒否権もそもそもなくて。


それがうちの母親だから、そうやって育てられてきた32年…

今初めて歯向かいたい気分です。


「あのっ」

「もう32でしょ、あんたもそろそろ考えなさいね」

「…っ」
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