私の婚約者は、嘘ばっかり〜クズだけど優しい彼〜

Lie4.)

「衣咲、しゃんっとしなさいよ」

「…はい」

着物に身を包んだ母の後ろを、母に用意してもらった着物を着て歩幅狭く歩く。じゃないと転びそうになるから、こんな高そうな着物着たことないし。

しかもここも高級そうなお店、日本庭園わきを歩く廊下はツヤツヤでより一層緊張感が増した。

「今日のお見合い失敗出来ないんだからね!」

「……はい」

それとは反対に母はスタスタと歩いて、その後ろ姿も様になってさすがお茶の先生という風格っぷりだ。

「どうせそんなことだろうと思ったのよ」

結局、こうなってしまった。
もう無理だなって思って本当のことを話したらあの写真を渡された。

断ったと思われたお見合いの話は続いていたらしい、断ってなかったんだってさ。

…つまりは、最初から全部お見通しってことね。

さすが私の母親っていうか、なんていうか。


どれだけ信用されてないんだ、私。


「お相手の方はもうお待ちだから」

ゆっくり引き戸が開く、さすがにこの雰囲気には緊張が走る。

いざこの向こうに、あの人がいるー…
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