冷徹皇子の夜伽番 ──童貞を奪うのは私の役目?──
「アルベール皇子は、女嫌いなんでしょう?」

王宮で侍女をしている私――エリシアの耳にも、そんな噂は日々届く。

冷徹皇子、女嫌いの殿下、恋を知らぬ童貞皇子。

呼び名は色々あるけれど、どれも真実にはほど遠い気がしてならない。

なぜなら、殿下はなぜか私にだけは話しかけてくるのだ。

他の令嬢や侍女たちには視線すら与えないのに、廊下ですれ違えば「疲れていないか」と声をかけ、書類を運んでいれば「重くはないか」と気遣ってくれる。

一度だけ、勇気を出して聞いてみたことがある。

「殿下は……女嫌いなのですか?」と。

アルベール皇子はほんの一瞬目を見開き、そして小さく笑った。

「いや、そんな事はないよ。」

その時の笑みが忘れられない。

冷たいと評されるその顔が、柔らかく綻んだ瞬間。

あの光景を、胸の奥にそっとしまい込んでいる。

なのになぜ、殿下は誰一人として抱かないのだろう。

恋をしている様子もなく、求めるような素振りも見せない。

もしかして――殿下は本当に、愛のない夜伽を嫌っているのだろうか。
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