夜を繋いで君と行く
「俺も呼び捨てにはしてないのに、名前、呼び捨てで呼ばないでくれるかなぁ~?」
「あ、悪い。そうそう、多分下の名前を呼ぶの嫌だろうなと思って、ちゃんと苗字で呼んでんじゃん。」
「そういうところは察しがいいのに、なんで彼女のことだと察しが悪くなるんだよ。」
「…察しが悪いのかな。別に三澄たちを見る目と大きく変えてるつもり、ないんだけど。…言わないことが上手いんだよ、怜花は。いやまぁ、これは俺もなんだけど。」

 少し不機嫌そうな顔が緩和され、今度は三澄の顔には疑問の色が浮かんでいる。

「言わないことが上手いって何?」
「…なんていうか、…そうだな、大丈夫って顔を作るのが上手い。当たり障りない話ならテンポよくできるけど、踏み込まれた話をしてもされても…間ができる。相手の受け取り方を想像して、頭の中で悪い方に引っ張って、止まる。多分、三澄たちにはそれがない。まっすぐに受け止めてもらったことが何度もあって、受け止めたことも何度もあって、だから大丈夫って思える。…大丈夫な顔はしててもさ、大丈夫じゃないときの方が多い、みたいなことがない。自分のキャパをわかって、無茶をしない。…真っ当な人間だよ、二人はさ。」

 タッチパネルを元の位置に戻しながら、律は少し不貞腐れたように三澄を横目で見た。

「2人とも真っ当に見えるけどね。真っ当だから、ぶつかるんでしょ?でも、ぶつかってもボールが落ちても、諦めないことにしたんじゃないの?」
「…まぁ、そうだけど。」
「じゃあそれが2人のやり方ってことじゃない?痛みは伴うけど、それでも2人がいいんだからさ。今度は激痛になる前に、かすり傷くらいの時に痛いよって言えばいい。二階堂だって一橋さんだって、なんでそんな小さな傷でいちいち言ってくるんだよって相手に詰め寄らないんじゃない?むしろ、そんなことでも言ってくれるのって安心できるような気がするけど。」
「なんなの、お前。千里眼でも持ってんの?」

 間髪入れずに返ってきた律の言葉にケラケラと笑いながら、三澄は運ばれてきたドリンクに口をつけた。

「千里眼持ってるような役、やったことないな、そういえば。俺もそういう師匠みたいな役、挑戦しようかな。二階堂はなー結構あるもんな、チート技持ってるキャラ。なのに本人はチート昨日使えてない、と。」
「キャラと俺は別人ですからねー。」

 律も律で、ぐいっとドリンクを飲む。まだ拗ねたような顔をしていて、時折出る子供っぽいところが今日は隠すことなくずっと出されている。

「でもまぁ、よかった。前よりもずっと、なんか楽しそう。別に前がつまらなそうだとは思わないけど、今の方が目が生きてるって感じする。怜花さんのおかげだね?」
「あっ何?嫌がらせ?」
「二階堂だって里依って呼んだじゃん!呼び捨てにしなかっただけ譲歩してやったんだけど?」
「俺は別に二階堂みたいに嫌がらせのつもりで呼んだわけじゃないし。」
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