夜を繋いで君と行く
「それで、電話?」

 怜花は頷く。手紙の方が言葉をまとめるゆとりがあるのは確かだ。だがしかし、こちらの住所を書かなくても届けられるのかはわからない。だとすれば、電話番号を仮に知られたとしても問題のないものを使って、電話で要件を伝えてしまうことの方が無理のないことのように思えた。

「1週間くらい借りるって感じにして、その、妹がいないときにかけちゃうかもしれないから……日をまたいで電話がかかってきても対応できるように……。」
「電話、大丈夫?」
「え?」
「声に怯んで言いたいことが言えなくなるとかは、ない?」
「それ、は……わからない、けど。」

 正直に言えば、今律と話しているようにはきっと話せない。それはわかる。父の声ならばまだましでも、母や妹の声だったら喉の奥で声が詰まってしまうかもしれない。そういう不安はなくはない。怜花は太ももの上で空いている手をぎゅっと握った。

「あのさ、その電話、俺がいる日っていうか時間にしてもらうことはできる?」
「できる、けど……。」
「俺に聞かれるのが嫌とかは?」
「ないよ、そんなの。律に聞かれて困る話は……そうだな、里依から教えてもらう三澄さん経由の律の困った話くらいだよ。」
「ちょっと待って!何?椎名さんから変な話流れてきてない?」
「律があんまり三澄さんの話してくれないから、私は里依に出せる情報がないんだよ?」
「だってさ~普通に仕事の話より怜花の話聞きたいじゃんか。それにこういう、最近はちょっとバタバタしてたし。」

 律の片腕が怜花の細い腰を引いた。少しだけ体の向きを変えられて、怜花の顎がトンと律の肩に触れた。

「怜花が話してる間は何も言わない。でも、我慢できないって思ったら言い返すかもしれない。……んだけど、なるべく邪魔はしないから、一人で電話は、ちょっとやめてほしい。心配だし、傷つけられるの嫌だから。」

 『やめてほしい』なんて、律に初めて言われたかもしれない。そんなことを思うと、シリアスな話をしているはずなのに少しだけ微笑んでしまう。

「……え、笑われるようなこと、言った?」
「やめてほしいんだって思って。」
「うん。怜花が言いたいことを言えなくなるのも嫌だし、不当に傷つけられるのも嫌だよ。ってかこれ以上は絶対許さないし。なので監視したいです、そう、監視!」

 またしても似つかわしくない言葉が出てきて、それにも力が抜ける。律の口から出てくる硬い言葉は、似合っていないからちぐはぐで妙な取り合わせだ。

「じゃあ、監視してもらおうかな。律みたいにちゃんと、言いたいことを私も言いたいから。」
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