沈丁花奇譚
 おそらく時刻は深夜1時…。私と彼とのわずかな顔と顔の距離の間に、妖しげな沈黙がしばらく流れた。
 互いの目線はぎこちなく交わされ、甘い呪縛に心地よく委ねられていく。
 墨と藍を流し込んだようなぬばたまの夜空、その空を彩るあまたの星屑達、とろみある乳白色のまばゆい灯りを解き放つ満月…。
 いつの間にか私は、やおら彼に抱き寄せられながらすらりと伸びたしなやかで長い指に髪を優しくとかされていた。
 ゾワリと心地よく走る、背中への泡立つ快感て私は身も心も鍵を開けた。
 二人にはもう身も心もさえぎるものはない。そこから先は互いに溶け合うように重なっていった。
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