蝶々のいるカフェ
第7話 ある恋の出来事
今日は朝からどんよりとしていた。何とか天気は保っていたが、夕方になってから雨が降りはじめた。
「雨が降ってきてしまったか。本当は午前中にカフェに行きたかったのだが、用事があって夕方になってしまった」
ぶつぶつと独り言を話していると、道路は雨で色を変え、耳障りな雨音が響いた。しかし、雨音と言うものは最初は耳障りでも、聞いているうちに心地よくも感じたりもする。リズムが良いのかもしれない。
カラン……
「いらっしゃいませ!」
バイトの恋ヶ窪さんの声である。この天気とは対照的にとても元気である。
私は席に着き、エスプレッソを頼んだ。
新聞を読んでいると、恋ヶ窪さんがエスプレッソを持ってきた。
「最近、ずいぶん元気が良いね。活気があるというか」
「そうですか。気のせいですよ」
カラン……
その時、ドアが開いた。スーツを着た男性客のようだ。恋ヶ窪さんより4~5歳上といった感じか。
「いらっしゃいませ!!!」
ん? 私の時も元気の良い声だったけど、さらに元気な声になった気がした。
彼女は男性を席へ案内し、注文を取る。
「お仕事、お疲れ様です。何になさいますか?」
「いつもの、アメリカンとチーズケーキをお願いします」
話を聞いていると、何度も来ている客、つまり常連客だと思われた。多少よそよそしながらも、親しい間柄。そんな気がした。
彼女の顔を見ると、私が今まで見たことのないような笑顔だった。
「なるほど」
私はそうつぶやいた。
私は毎日このカフェに来るのだが、その後、この男性を何度も見た。もちろん、恋ヶ窪さんと話す姿も。
しかし、いつからかこの男性を見かけなくなった。
私はメニューを頼んでいるときに、恋ヶ窪さんに聞いてみた。
「最近、よく来ていた男性はどうしたんだい?」
「それが……」
どうやら、いつも来てた、その男性が急に来なくなったらしい。前に仕事の事を気にしていたから、会社がらみだろうと言っていた。
数日後。
「どうだい? あの男性はまだ来ないのかい?」
「はい……。ホント、どうしたんだろう」
私はなんとなく気まずい気持ちで、アメリカンとイチゴケーキを頂く。
今日は朝から天気で、すでに夕方になったが、雨ももちろん降りそうにない。それと対照的に恋ヶ窪さんの気持ちは沈んでいる。
「こればっかしは、どうもしてやれんな。困ったことに」
カラン……
その時、カフェのドアが開いた。
「いらっしゃ……」
恋ヶ窪さんの声がちょっと途切れたので、気になってドアのほうを見たら、例の男性が立っていた。
「遅くなってごめん」
「もう。遅すぎますよ」
話を聞いてみれば、彼はこのカフェの蝶々に感化されて、蝶々のデザインをメインとした広告のポスターを発案したが、却下されてしまった。そして、上司を納得させようと、遅くまで仕事をしていて、なかなかこのカフェに来ることができなかった。彼は広告会社の社員だったようだ。
そして、やっと認めてもらえて、その蝶々のデザインのポスターが採用された。
採用されたのはちょっと前なのだが、しばらく来てなかったので、どうも来にくくなったようだ。
なので、ポスターが公開できるようになった今日、来ることができなかった理由を話すとともにその実物のポスターを持参して来たようだ。
まあ、きっかけが欲しかったんだな。
「これがそのポスターだよ」
それはカフェ、店内の中を飛び回るたくさんの蝶々のポスターであった。蝶々は白いもの、黄色いもの、黒いものと、色とりどりであった。
「とても綺麗です」
彼女はそれだけ言って、いつものアメリカンとチーズケーキを出した。
彼女の顔は安堵したようでもあり、生き生きしていたようでもあった。
「雨が降ってきてしまったか。本当は午前中にカフェに行きたかったのだが、用事があって夕方になってしまった」
ぶつぶつと独り言を話していると、道路は雨で色を変え、耳障りな雨音が響いた。しかし、雨音と言うものは最初は耳障りでも、聞いているうちに心地よくも感じたりもする。リズムが良いのかもしれない。
カラン……
「いらっしゃいませ!」
バイトの恋ヶ窪さんの声である。この天気とは対照的にとても元気である。
私は席に着き、エスプレッソを頼んだ。
新聞を読んでいると、恋ヶ窪さんがエスプレッソを持ってきた。
「最近、ずいぶん元気が良いね。活気があるというか」
「そうですか。気のせいですよ」
カラン……
その時、ドアが開いた。スーツを着た男性客のようだ。恋ヶ窪さんより4~5歳上といった感じか。
「いらっしゃいませ!!!」
ん? 私の時も元気の良い声だったけど、さらに元気な声になった気がした。
彼女は男性を席へ案内し、注文を取る。
「お仕事、お疲れ様です。何になさいますか?」
「いつもの、アメリカンとチーズケーキをお願いします」
話を聞いていると、何度も来ている客、つまり常連客だと思われた。多少よそよそしながらも、親しい間柄。そんな気がした。
彼女の顔を見ると、私が今まで見たことのないような笑顔だった。
「なるほど」
私はそうつぶやいた。
私は毎日このカフェに来るのだが、その後、この男性を何度も見た。もちろん、恋ヶ窪さんと話す姿も。
しかし、いつからかこの男性を見かけなくなった。
私はメニューを頼んでいるときに、恋ヶ窪さんに聞いてみた。
「最近、よく来ていた男性はどうしたんだい?」
「それが……」
どうやら、いつも来てた、その男性が急に来なくなったらしい。前に仕事の事を気にしていたから、会社がらみだろうと言っていた。
数日後。
「どうだい? あの男性はまだ来ないのかい?」
「はい……。ホント、どうしたんだろう」
私はなんとなく気まずい気持ちで、アメリカンとイチゴケーキを頂く。
今日は朝から天気で、すでに夕方になったが、雨ももちろん降りそうにない。それと対照的に恋ヶ窪さんの気持ちは沈んでいる。
「こればっかしは、どうもしてやれんな。困ったことに」
カラン……
その時、カフェのドアが開いた。
「いらっしゃ……」
恋ヶ窪さんの声がちょっと途切れたので、気になってドアのほうを見たら、例の男性が立っていた。
「遅くなってごめん」
「もう。遅すぎますよ」
話を聞いてみれば、彼はこのカフェの蝶々に感化されて、蝶々のデザインをメインとした広告のポスターを発案したが、却下されてしまった。そして、上司を納得させようと、遅くまで仕事をしていて、なかなかこのカフェに来ることができなかった。彼は広告会社の社員だったようだ。
そして、やっと認めてもらえて、その蝶々のデザインのポスターが採用された。
採用されたのはちょっと前なのだが、しばらく来てなかったので、どうも来にくくなったようだ。
なので、ポスターが公開できるようになった今日、来ることができなかった理由を話すとともにその実物のポスターを持参して来たようだ。
まあ、きっかけが欲しかったんだな。
「これがそのポスターだよ」
それはカフェ、店内の中を飛び回るたくさんの蝶々のポスターであった。蝶々は白いもの、黄色いもの、黒いものと、色とりどりであった。
「とても綺麗です」
彼女はそれだけ言って、いつものアメリカンとチーズケーキを出した。
彼女の顔は安堵したようでもあり、生き生きしていたようでもあった。