雨の日、君に恋をした
第9話 繋がった心
付き合ってから、もう何度目のデートだろう。
帰り道だった。
別れ際、悠真の背中を見つめていた。
「悠真ー!」
思わず叫ぶと、彼は驚いたように振り返る。
「私、悠真が好きだよ!」
初めての告白。すると悠真はまた後ろを向いて、動かなくなった。心配で駆け寄ると、肩が小さく震えているのが見える。
胸がぎゅっと締めつけられた。
今まで不安だったんだろう――それでもいつもそばにいてくれた。いつも気遣ってくれていたんだ。そんな優しさを思い出しながら、気づけば彼を抱きしめていた。
「待っててくれて、ありがとね」
「それはいいんだよ。いつまでも待つって決めてたから。伝えてくれて、ありがとう」
「ほら、こっち見てごらん」
「‥‥‥うるさい。」
冗談っぽく言う私を、悠真はぐいっと引き寄せた。
そして、不意に唇が重なった。
「もう遠慮しない」
涙目の彼は、にやりと笑った。
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気持ちが通じたあの日から、二人の距離は自然と近くなった。
悠真のアパートで過ごす時間も増え、気づけば一緒に住むように。
毎日隣にいるだけで、ひなは心から幸せを感じていた。
いつものように2人で並んでソファに座り、テレビを見ていた。
「ねぇ、悠真」
「ん?」
「ずっと…こうやって一緒にいてもいい?」
悠真はひなの目を見つめた。
「当たり前だろ。ひながいいなら、俺もずっと一緒にいたい」
永遠なんてないことは、1番よくわかっていた。それでも、言葉にした。それを真実にするために。
お互いがお互いを必要としていた。ふとした瞬間に感じた。彼はどこか寂しそうで、不安定で、私が隣にいないと壊れてしまいそうな‥‥‥そんなところも。私たちは、似たもの通しだと感じた。
「もう離さない」
そう言って悠真は、わざと抱きしめる手をぎゅっと強くした。
「ちょっと、痛いよ〜!」
そう笑うひなの声に、悠真は腕を少し緩めてから、耳元で囁いた。
「……本気で言ったんだ。もう絶対離さない」
不器用なほど真剣な声に、胸の奥が熱くなる。
ひなは照れくさくなって、彼の胸に顔をうずめた。
「悠真って……ほんと、ずるい」
「なんで」
「そう言われたら、離れられなくなるじゃん」
悠真は小さく笑って、もう一度抱き寄せる。
その仕草に、ひなも自然と微笑んだ。
ただ隣にいるだけで、心が満たされる――そんな日々が、ずっと続くことを願っていた。