彼と妹と私の恋物語…結婚2週間で離婚した姉が再婚できない理由…

その日を境に、秋太と佐藤部長の、京子を巡る熾烈で、しかし紳士的な争いが始まった。

朝、京子が社員用エレベーターを降り、オフィスフロアに足を踏み入れると、まるで示し合わせたかのように二人の男性がそれぞれのデスクから立ち上がった。
「鏡先生、おはようございます。今朝は冷えますね。温かいコーヒーでもいかがですか?」
営業部のエースデスクから、佐藤が爽やかな笑顔と共に、湯気の立つカップを手に近づいてくる。
その行く手を阻むように、副社長室から出てきた秋太が、ぶっきらぼうだが心からの気遣いを込めた声で言った。
「おはよう。昨夜はよく眠れたか?無理はするなよ」
二人の視線が、京子を挟んで静かに交錯する。
フロアの社員たちは、固唾をのんでその光景を見守っていた。

昼休みが近づくと、その攻防はさらに激しさを増した。
京子がデスクで書類をまとめていると、内線電話が鳴る。受話器を取ると、弾むような佐藤の声がした。
「鏡先生!今、大丈夫ですか?実は駅前に新しいイタリアンができたんですが、今日のランチにでもどうかなと!」
魅力的な誘いに京子が返答に迷っていると、今度は目の前のPCに秋太からのチャットメッセージがポップアップした。
『役員食堂に、君の栄養バランスを考えた特別定食を準備させた。仕事も大事だが、体調管理も仕事のうちだ』
受話器を片手に、PC画面を見つめる京子。公私にわたる二人のアプローチは、彼女の心を大きく揺さぶった。

京子は、その真っ直ぐな二人のアプローチに戸惑い、心が大きく揺れていた。
佐藤の太陽のような明るさと、裏表のない優しさは、凍てついた心を温めてくれる。彼といると、復讐に生きてきた自分が、普通の女性としての幸せを夢見てしまいそうになる。もし、自分に過去がなく、ただのシングルマザーであったなら、迷わず彼を選んでいたかもしれない。
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