彼と妹と私の恋物語…結婚2週間で離婚した姉が再婚できない理由…

一方で、秋太が見せる不器用だが揺るぎない誠実さは、京子が7年間心の奥底で求め続けていたものだった。彼の瞳に見つめられるたび、憎しみよりも先に、忘れられない愛しさが込み上げてきてしまう。この人の隣こそが、自分の本当の居場所なのではないか、と魂が囁くのだ。

京子が二つの想いの間で答えを出せないまま、時間だけが過ぎていった。

そんな日々の中で、佐藤は次第に気づき始めていた。秋太が京子に向ける眼差しは、単なる恋敵への嫉妬ではない。彼女が抱える計り知れないほどの過去の痛みを、丸ごと受け止め、共に背負おうとする覚悟の光が宿っている。自分には踏み込めない、あまりに深く、重い絆が二人にはあるのではないか、と。

彼の漠然とした予感が確信に変わったのは、あの運命の日だった。

佐藤は、100億規模の海外投資ファンドとの最終商談に臨んでいた。しかし、相手の若き社長は英語しか話さず、気難しいことで有名だった。依頼していた通訳の言葉では全く響かず、交渉は決裂寸前に追い込まれていた。

「This is waste of time.(時間の無駄だ)」

相手が席を立とうとした、その時だった。会議室のドアの前で頭を抱えていた佐藤の元に、偶然通りかかった京子が声をかけた。
「部長、顔色が悪いですよ。何かトラブルですか?」
事情を察した京子は、「少しだけ、お手伝いします」と会議室に入った。

その瞬間、それまで不機嫌そうに腕を組んでいた相手の社長が、椅子から転げ落ちんばかりに驚愕した。
「Ms. KAGAMI!? No... you are... "Kaede"! The legend of Silicon Valley!(鏡さん!?いや…あなたは…“カエデ”!シリコンバレーの伝説の!)」

彼は、かつて楓がCEOを務めていた企業の会長の息子であり、過去にビジネスの窮地を楓に救われた恩があったのだ。
「なぜあなたがここに!?父がずっと探していました!」
京子は苦笑しながら彼をなだめ、佐藤を指して言った。
「彼は、私の大切な同僚です。彼の提案は、私が保証します」
その一言で、100億の商談は即決した。

会議室を出た後、佐藤は呆然としながら京子に問いかけた。
「鏡先生…あなたは、一体何者なんですか…?」
京子はただ、寂しそうに微笑むだけだった。

その日の夕方、佐藤は見てしまった。
副社長室の前で、秋太が京子の肩を優しく抱き、何かを真剣に語りかけている姿を。
京子は困惑しながらも、その腕を振り払おうとはしなかった。
秋太の表情は、彼女の壮絶な過去も、計り知れない才能も、そのすべてを理解し、包み込もうとする覚悟に満ちていた。
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