彼と妹と私の恋物語…結婚2週間で離婚した姉が再婚できない理由…
「この結婚は、なかったことにします」
「か、楓!何を言い出すんだよ」
顔色を変えた秋太が言った。
「…私は、肩書や素性で結婚する気は毛頭ございません。…それに、このような考えの方と。たとえ義理といえども家族になりたいとは思えません…」
「なんですって…。あなた、自分の身分をわきまえているの?素性もはっきりしない、学歴も不明。それに…その体系で…」
「言いたいことはそれだけでしょうか?」
「あなたに、秋太は相応しくないわ!」
「そうですか。…失礼します!」
丁寧に頭を下げ楓はその場を去っていった。
秋太も何も言わずに、楓の後を追った。
「トワ、今のはお前が悪い。楓さんに謝ってくるんだ」
「どうして?当たり前のことを言ったのになぜ?」
遠くで、翔太とトワが言いあっている声が聞こえたが楓は振り向くことなく去っていった。
その後。
秋太が楓に何度も謝った。実家にも報告しなくてはと思い連れてきたのが間違っていたと、秋太は何度も楓に謝り結婚を辞めるなんて言わないでくれと頭を下げた。
秋太の親は祖父だけだから、両親が認めなくても問題はない。副社長を辞めても構わないから…そう言って楓も説得した。
楓は宗田家の両親と絶縁するならという条件で、秋太と結婚を承諾した。
住まいも秋太が住んでいるマンションで暮らすことにした。
祖父はすでに亡くなっていることから、入籍だけ先に済ませて結婚式は後日行うという話で収まった。
結局2週間で結婚生活は終わりを告げた。
7年経過して、秋太は両親の元に戻り一緒に暮らしている。
そこに入り込むにあたり、別居してほしいとは言えない。
『あなたのような方が、秋太は…相応しくない』
あの言葉が、棘のようにずっと胸に突き刺さっている。完
璧な彼女に、自分は嫁として認められていなかった。宗田家に入れば、同じ思いをするのではないか。
何より、大切な息子の柊まで、辛い思いをさせてしまうかもしれない。
楓は、込み上げる本心を、毅然とした仮面で隠した。
宗田家での同居にあたり、楓はこう言った。
「…わかりました。ですが、それはあなたのためではありません。柊に、父親との時間を作ってあげるためです」
彼女は、秋太の瞳をまっすぐに見据え、新たな、そしてかつてと同じ契約を突きつけた。
「ですから、条件があります。私たちは、柊の両親であるというだけ。一切、何の関係も持ちません。形だけの家族として、です。それがお約束できるのなら」
その言葉に、秋太の表情から光が消えた。
彼女の心の壁の厚さに、胸が痛む。だが、彼は静かに頷いた。
「…わかった。君がそう望むなら。まずは、そばにいられるだけでいい」
その約束のもと、楓は「鏡京子」としての役目を完全に終える準備を始めた。
宗田ホールディングスの顧問弁護士を正式に辞任し、すべてを支えてくれた叔父に報告と感謝を伝えた。
そして、宗田家に入るにあたり、彼女は7年間捨てていた名前を取り戻す。
戸籍上は、今も変わらず「宗田楓」。
彼女は、楓として、再びあの家に戻ることを決意した。