彼と妹と私の恋物語…結婚2週間で離婚した姉が再婚できない理由…

「行かせない」
秋太は数歩で距離を詰めると、楓の腕を強く掴んだ。その力強さに、彼の決意の固さが伝わってくる。
「君の様子がおかしいことには、ずっと前から気づいていた。でも、君が自分で乗り越えてくれるのを、僕は信じて待っていたんだ。…でも、君は僕から逃げようとした」
「…」
「先日、叔父さんに会ってきたんだ」
その言葉は、楓にとって予期せぬ一撃だった。
「君が苦しんでいるのに、何もできない自分が不甲斐なくてね。どうすれば君を救えるのか、聞きに行ったんだよ」

秋太は、静かに語り始めた。
「叔父さんは言っていた。『あの子は、自分を罰しようとしている。幸せになることから逃げているんだ。秋太くん、君だけが、あの子の心の牢獄から救い出せる』って」
彼の瞳が、痛いほど真っ直ぐに楓を射抜く。
「君がどんなに自分を罪人だと思っても、僕にとって君は、世界でたった一人の、愛する女性だ。君の過去も、罪も、全部僕が背負う。だから、お願いだ。僕から逃げないでくれ」

その言葉が、楓の心の奥底で頑なに閉ざされていた最後の扉を、粉々に打ち砕いた。堰を切ったように涙が溢れ、楓はその場に崩れ落ちそうになる。秋太は、そんな楓の体を力強く抱きしめた。


観念した楓は、秋太が誘うまま、空港近くの高級ホテルへと向かった。スイートルームの窓の外には、夜明け前の美しいグラデーションが広がっている。

「一緒にいたくないと思うなら、離れても構わない。でも、僕はどこにいても楓を見守る。離婚だけは絶対にしない…」
「私は…あなたに相応しくない」
かき消えそうな声で呟く楓に、秋太は優しく、しかしはっきりと告げた。
「相応しいかどうかは僕が決める。僕にはもったいないくらいの女性だと、ずっと思っている。…だから、楓を守れる男になると決めて、今まで生きてきたんだ」
その言葉に、楓の心が溢れ、もう何も言えなかった。
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