彼と妹と私の恋物語…結婚2週間で離婚した姉が再婚できない理由…

翌朝。
楓が目を覚ました時、隣に秋太の姿はなかった。シーツに残る微かな温もりだけが、昨夜の出来事が現実だったと告げている。
(夢…だったのかもしれない…)
そう思うことで、楓はなんとか平静を保とうとした。

リビングへ行くと、秋太はいつもと全く変わらない様子で新聞を読んでいた。
「おはよう、楓。よく眠れたかい?」
その態度は、まるで昨夜など何もなかったかのようだ。楓の心に、ちくりと小さな痛みが走る。
何も言わない彼に、楓も何も言えなかった。
(やっぱり、夢だったんだわ…)
そう自分に言い聞かせ、楓は罪悪感と後悔に苛まれながら、出社の準備を始めた。

そして、その日、地獄の扉が開いた。
「経理部の茅野楓に、会社の金を5千万横領した疑いがかかっています!」
社内中に響き渡る声。巧妙に捏造された証拠。楓を冷たい目で見る社員たち。そして、その中心で悲劇のヒロインのように涙ぐんでいたのは、経理部の先輩・内藤麻友だった。

罠だ。
楓はすべてを悟った。弁明はしなかった。このまま秋太のそばにいれば、彼をも不幸に巻き込んでしまう。

その夜、秋太が帰宅した時、広すぎるマンションは静まり返っていた。楓の荷物はすべて消え、テーブルの上には、ただ一枚、記入済みの離婚届が置かれていただけだった。

「楓…!」

秋太の絶叫が、虚しく響く。
だが、彼は知っていた。楓がそんなことをするはずがない。彼女は、誰かにはめられたのだ。
秋太は、冷たく光る離婚届を強く握りしめた。

――必ず、君を見つけ出す。そして、君を陥れた奴らを、僕がこの手で裁いてみせる。

水面下で、もう一つの復讐劇の幕が、静かに上がろうとしていた。

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