彼と妹と私の恋物語…結婚2週間で離婚した姉が再婚できない理由…
その言葉は、楓の心の奥深くまで届いた。
この男なら、信じてもいいのかもしれない。――いや、ダメだ。私は復讐のために生きている。
だが、「副社長夫人」という立場は、真犯人である内藤麻友の懐に入り込み、真相を探るための絶好の切り札になるかもしれない。
楓は、込み上げる本心を打算という名の仮面で隠し、一つの決断を下した。

「……結婚、します。ただし、条件があります」
楓は、差し出された婚約指輪には目もくれず、秋太に告げた。
「一切、あなたとは何の関係も持ちません。これは契約です。それでもいいのなら」

それは、あまりに冷酷な条件だった。だが、秋太は一瞬の迷いも見せず、優しく微笑んだ。
「構わない。君がそばにいてくれるなら、それでいい」

こうして、わずか2週間の、偽りの結婚生活が始まった。
同じ家に住み、別々の寝室で眠る日々。それでも、秋太の優しさに触れるたび、楓の心は揺らいだ。このまま、本当の夫婦になれたら。そんな淡い夢を、一瞬でも見てしまったのが間違いだったのかもしれない。

ある夜。
楓がベッドで本を読んでいると、静かに寝室のドアが開き、秋太が入ってきた。その瞳は、今まで見たことがないほど熱っぽく、そして切なげに揺れていた。
「秋太…さん…?」
驚く楓を意に介さず、秋太はまっすぐにベッドへ向かうと、楓の布団へもぐりこんできた。

「や…っ、だめです…!約束が…!」
楓は必死に彼を拒もうとするが、秋太は彼女の手首を優しく、しかし力強く掴んで離さない。
「もう、我慢できないんだ」
その声は、苦しみに満ちていた。「愛している人に、すぐそばにいるのに、触れることすらできないなんて…。もう、限界なんだ、楓」
真剣な瞳で、魂の底から訴えかけるように見つめられ、楓の胸が大きく高鳴った。理性が、彼の熱に溶かされていく。

秋太の手が、ゆっくりと楓のパジャマのボタンに伸びる。一つ、また一つと外されていくたびに、楓は恥ずかしさで露わになった肌を隠そうとした。
「綺麗だよ…」秋太が、恍惚とした表情で囁く。「全部、見せてほしい…」
「で、電気…消してください…」
「…じゃあ、僕の名前を呼んで…。楓…」
「秋太さん…」
「『さん』はいらない。呼び捨てで…僕のためだけに、呼んでくれないか?」
「…秋太…」

その響きは、まるで魔法の呪文だった。
喜びに満ちた表情で、秋太は楓の首筋に唇を埋める。その夜、秋太は愛しさをぶつけるように、何度も、何度も楓を求めた。

< 6 / 55 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop