彼と妹と私の恋物語…結婚2週間で離婚した姉が再婚できない理由…
鏡京子という国際弁護士が宗田ホールディングスの顧問に就任して一ヶ月。
社内の空気は、彼女の登場によって一変した。寸分の隙もない高級スーツに身を包み、ハイヒールで廊下を闊歩する姿は、まるでファッションショーのランウェイを歩くトップモデルのようだった。冷徹なほどに理路整然とした仕事ぶりと、時折見せる氷のような微笑みは、社員たちにとって畏怖と憧れの対象となった。
「副社長、また内藤さんが…」
「鴨川、追い返せ。警察を呼んでも構わん」
副社長室の扉の前で、運転手の鴨川が困惑した表情で報告する。内藤麻友は、今日も懲りずに手作りの弁当を持って押しかけてきていた。社内では「副社長夫人」として振る舞い、誰もがそう信じている。だが、秋太が彼女をオフィスや自宅に招き入れたことは一度もなかった。
秋太は執務机の椅子に深く身を沈め、眉間に刻まれた皺を指で揉んだ。麻友を解雇しないのは、彼女が楓を陥れた首謀者であると確信し、その金の流れと共犯者の尻尾を掴むため。7年間、水面下で続けてきた調査は、あと一歩のところで行き詰まっていた。
そこへ、軽やかなノックと共に京子が入室してきた。
「副社長、経理部長の沢富氏との打ち合わせ、終わりました」
「…ご苦労」
秋太は顔を上げ、京子を直視した。
茅野楓。
初めて会った日から、いや、履歴書の写真を見た時から、彼は気づいていた。7年の歳月と過酷なダイエットは彼女の外見を劇的に変えたが、瞳の奥に宿る強い光、考え込むときに微かに動く唇の癖、そして、不意に自分に向ける視線に宿る、憎しみと悲しみが入り混じった色。それは、かつて愛した楓そのものだった。
痩せてほしくない、と何度も言った。ふくよかな体つきも、美味しそうにご飯を食べる姿も、全てが愛おしかった。太っていても、楓の整った顔立ちは誰より魅力的だった。痩せれば、きっと誰もが振り返る美女になる。そうなれば、自分だけのものではなくなってしまう。そんな幼稚な独占欲があったことを、今になっては後悔しかできない。
「沢富部長からの報告ですが、海外への不正送金の新たなルートがいくつか浮上しました。巧妙に偽装されていますが、かなり執拗に資金洗浄を繰り返している形跡があります」
京子は淡々と報告する。その声には何の感情も乗っていない。
「犯人に心当たりは?」
秋太は、わざと探るように聞いた。
「…現段階では。ただ、これほど長期間にわたり、大胆かつ緻密な犯行を続けられる人物は、会社の経理システムを熟知し、内部に協力者がいる可能性が高いでしょう」
京子の視線が、一瞬だけ鋭く光る。その光は、紛れもなく復讐の色をしていた。
社内の空気は、彼女の登場によって一変した。寸分の隙もない高級スーツに身を包み、ハイヒールで廊下を闊歩する姿は、まるでファッションショーのランウェイを歩くトップモデルのようだった。冷徹なほどに理路整然とした仕事ぶりと、時折見せる氷のような微笑みは、社員たちにとって畏怖と憧れの対象となった。
「副社長、また内藤さんが…」
「鴨川、追い返せ。警察を呼んでも構わん」
副社長室の扉の前で、運転手の鴨川が困惑した表情で報告する。内藤麻友は、今日も懲りずに手作りの弁当を持って押しかけてきていた。社内では「副社長夫人」として振る舞い、誰もがそう信じている。だが、秋太が彼女をオフィスや自宅に招き入れたことは一度もなかった。
秋太は執務机の椅子に深く身を沈め、眉間に刻まれた皺を指で揉んだ。麻友を解雇しないのは、彼女が楓を陥れた首謀者であると確信し、その金の流れと共犯者の尻尾を掴むため。7年間、水面下で続けてきた調査は、あと一歩のところで行き詰まっていた。
そこへ、軽やかなノックと共に京子が入室してきた。
「副社長、経理部長の沢富氏との打ち合わせ、終わりました」
「…ご苦労」
秋太は顔を上げ、京子を直視した。
茅野楓。
初めて会った日から、いや、履歴書の写真を見た時から、彼は気づいていた。7年の歳月と過酷なダイエットは彼女の外見を劇的に変えたが、瞳の奥に宿る強い光、考え込むときに微かに動く唇の癖、そして、不意に自分に向ける視線に宿る、憎しみと悲しみが入り混じった色。それは、かつて愛した楓そのものだった。
痩せてほしくない、と何度も言った。ふくよかな体つきも、美味しそうにご飯を食べる姿も、全てが愛おしかった。太っていても、楓の整った顔立ちは誰より魅力的だった。痩せれば、きっと誰もが振り返る美女になる。そうなれば、自分だけのものではなくなってしまう。そんな幼稚な独占欲があったことを、今になっては後悔しかできない。
「沢富部長からの報告ですが、海外への不正送金の新たなルートがいくつか浮上しました。巧妙に偽装されていますが、かなり執拗に資金洗浄を繰り返している形跡があります」
京子は淡々と報告する。その声には何の感情も乗っていない。
「犯人に心当たりは?」
秋太は、わざと探るように聞いた。
「…現段階では。ただ、これほど長期間にわたり、大胆かつ緻密な犯行を続けられる人物は、会社の経理システムを熟知し、内部に協力者がいる可能性が高いでしょう」
京子の視線が、一瞬だけ鋭く光る。その光は、紛れもなく復讐の色をしていた。