罪な僕は君と幸せになっていいだろうか

月海家へ

ようやく月海くんの家について、僕は車から降りた。

「鷹栖、荷物重たくない?俺も持つよ」

そう言って手さげを持ってくれる。

「ありがとう。お言葉に甘えさせてもらうね」

意外と思いなと感じていたから、そう言ってもらえて単純に助かった。
それから、家のドアを月海くんが開けた。

「おかえりなさいませ、陽翔様。そちらの方は例の…鷹栖蒼唯様でしょうか?」

執事服を着た男性が僕を見てそう言った。
月海くんの世話係だろうか。
僕は礼をして挨拶をした。

「初めまして、鷹栖蒼唯といいます。本日からお世話になります。よろしくお願いします」

「やはりそうでしたか。よろしくお願いします。それと、敬語はおよしください」

普通は執事に敬語など使わない。
だから、そう言っているのだろうと察した。

「わかった。じゃあ、普通に話すね」

そう言って笑った。
それから、月海くんが執事さんを紹介してくれる。

「鷹栖、彼は神谷陸斗(かみやりくと)。俺の専属お世話係なんだ。あと…あれ、洸樹(こうき)は?」

「そろそろくると思うのですが…」

「申し訳ありません!遅れました!」

そう言って、急いだ様子で誰かが廊下の奥から走ってきた。
髪がツンツンと跳ねていて、身長の小さい男の子という感じ。
けれど、しっかり執事服を着ている。

「あ、きた!こいつは城戸洸樹(きどこうき)。今日から鷹栖の専属お世話係になるから。ていっても、結局天王さんがいるだろうけど」

そうは言ってもお世話になるわけだから、挨拶はしっかりしておかないと。

「初めまして、鷹栖蒼唯です。今日からよろしく」

「あっ、よろしくお願いします。ていうか、すごくきれいですね!」

「えっと…ありがとう」

僕は褒められてニコリと笑って見せた。
すると、城戸くんはピシリと固まってしまった。
そんな城戸くんを、神谷さんがつつく。

「はっ!すみません!ついきれいで見惚れちゃって!!」

僕はなんとも言えない複雑な表情をつくった。
そんな僕を見てか、月海くんが話をそらしてくれた。

「そういえば陸斗。母さんっていつ帰ってくる?電話したとき急いで帰るって言ってたんだけど…」

「はい。私もそのように伺っております。なので、そろそろかと」

その言葉を言い終えると同時に、玄関のドアが勢いよく開いた。
入ってきたのは月海くんに似た金髪の女性。

「母さん」

月海くんがそう呼んだのを見て、この人が彼のお母さんなのだと知った。
それから、月海くんのお母さんは僕に近寄ってきた。

「あら〜!!えらいかわいい子がきたのね!陽翔ってば、こんな子を独り占めするなんて罪な息子!もうっ!」

すごくハイテンションな人だなと思った。
それから僕が困っていると、月海くんが間に入ってくれた。

「はいはい、わかったから離れて。鷹栖が困ってる」

「あら、ごめんなさいね〜。私は陽翔の母の(はるか)で〜す。遥さんって呼んでね。よろしくね〜蒼唯くん」

そう言ってニコニコ笑った遥さん。

「あ、僕のこと知っているんですね」

「陽翔からひと通り聞いたのよ〜。家庭環境が悪い子を助けたくて、交渉した多額の寄付金をくれればって言われたって。それで、お金を払ったそうね」

そう…だったのか。
そこまでは聞いていなかったから、ちょっと驚きだ。
あの人はこうも簡単に僕を手放す。
愛されていないのはわかっていたけれど、ここまでとは。

「蒼唯くん」

遥さんに呼ばれて、僕はハッとした。

「ここではたくさんわがまま言っていいからね。私達はあなたの幸せを願ってるから。だから、もっと笑顔でいてちょうだい」

そう言って笑ってくれた。
さっきまで悲しんでいたのが嘘みたいに、心がぽかぽかしてくる。
不思議だ。
この人達といると自分の罪を忘れそうになる。
こんなこと今までなかったのに。

「ようこそ月海家へ」

「…お邪魔します」

僕は月海くん達に笑いかけたんだ。
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