罪な僕は君と幸せになっていいだろうか

ごめんなさい

それから何事もなく温泉を楽しんで、のぼせる前に出た。
月海くんはお手洗いに行くと言っていたので、僕は先に出て待っていることにした。
この後は庭を散歩する予定だから。
すると、よく聞き慣れた声が僕を呼んだ。
「えっ、蒼唯?」
確かに琉偉の声が聞こえた。
「琉偉…。えっと、久しぶりだね」
なんとなくそう言ってみる。
そしたら、琉偉は笑顔で駆け寄ってきた。
「うん、久しぶり。蒼唯が月海家に行ってから、なかなか会えてなかったもんな」
クラスも違うから会うことはほとんどない。
といっても、定例会議とかで会ってはいるんだけど。
「そうだね。琉偉はどうしてここに?」
「俺は部活の合宿で。蒼唯は?」
「えっと……」
僕はその質問に口ごもってしまった。
月海くんのこと、どうやって説明したらいい?
いきなり鷹栖家を出て、連絡も取らずどこにいるかも伝えなかった。
説明するべきなんだろうか。
そんなことを考えているうちに、月海くんが戻ってきた。
「ごめん鷹栖、待った?って、そっちは…確か副会長の……」
「卯月琉偉だよ。君は、特進クラスの月海くんだったよね?」
「うん、そうそう」
そんな会話をした後、琉偉は僕の方を見て言った。
まるで怒ってるみたいに。
「本当は言ってたんだね、月海くんにさ。俺には助けてって言わなかったのに、月海くんにはついていくんだね。俺、そんなに頼りなかった…?」
「ち、違う!誤解だよ琉偉…」
そういうふうに言われて、悲しくなった。
でも、僕が悪いよね。
琉偉を頼らなかったから、こんなふうになったんだ。
何も言えないで下を向いていると、月海くんがまるで守るように僕の前に立って琉偉に言った。
「そんな言い方しなくてもいいじゃん」
「は…?君には関係ないでしょ」
「関係あるよ。ある」
そう言った月海くんの声は強かった。
『もっと頼ってよ』
あの日言われた言葉を、彼の優しさを思い出して月海くんのすそをぎゅっとにぎる。
頼りたい。
そう思ったから。
「っ…!……卯月って言ったっけ?ちょっと外で話さない?」
「月海くん、そこまでしなくて…」
「いいよ。話そうか」
僕が最後まで言い終わる前に、琉偉が月海くんに返した。
「鷹栖、散歩は後で一緒にしよう。だから、少しの間部屋にいてくれないか?お願い」
「わかっ…た」
そんなに真剣な顔をされたら、何も言えなくなるじゃないか。
僕はしぶしぶうなずいた。
それから、僕は不安を抱えながら早足で部屋に戻った。
ーーーーー
部屋に戻るとすぐにドアを閉めて、腰をおろした。
琉偉も何を考えているんだか。
でも、ただひとつ分かることは僕が原因だということ。
やっぱり僕の存在は罪なんだ。
人を傷つけることしかできない。
ごめんなさい、ごめんなさい。
心の中で何度もそうつぶやいた。
僕はもう幸せなんて望まないから、どうか許してください。
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