私の婚約者は隠れSP!? 〜毎日が甘くて溶けそうです〜



 悠真はそっと手を伸ばし、私の手を握った。その指先は、いつも通り温かく、力強さに満ちている。

 だが、今夜はその温もりに、任務を超えた深い愛情が込められている気がした。私は彼の手を握り返し、その感触に全身が震えるような感覚を覚える。


 「遥さん、君を守るのは仕事ではない。君のすべてを愛しているからだ」


 その言葉が、胸の奥で何度も反響する。愛している――何度聞いても、信じられないような、でも心から欲していた言葉だった。私は思わず目を伏せ、震える声で呟いた。


 「……私、愛されて……いいんですか?」


 その問いかけに、悠真はにっこりと微笑んだ。その笑顔は、まるで私の不安をすべて溶かすように温かく、優しかった。


 「もちろんです。君は僕の婚約者で、そして僕の大切な人です」


 その言葉に、胸の奥から熱いものが込み上げてくる。私は愛される資格がないと思っていた。家族に道具のように扱われ、政略婚という冷たい枠組みに縛られてきた私に、こんな温もりを与えてくれる人がいるなんて。悠真の言葉は、私の心の奥に閉ざしていた扉を、そっと開けてくれるようだった。



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