推しのマネージャー(※ほんとは護衛)になりました。 ~アイドルたちの溺愛がとまりません!~
第十話 アイドルとマネージャーに就任です
ステージの上に現れたのは、人魚姫のような姿をした黒い影だ。
お昼に見た時は、わたしたちと同じくらいの背丈だったけど……今はその倍くらい大きく見える。
長い髪と、下半身の尾びれをゆらゆらと揺らしながら、星穏さんたちの方に近づいていく。
ちらりと客席の方を見てみたけど、お客さんたちには見えていないみたい。
お昼に現れた時、星穏さんには姿が見えているみたいだったけど、潤さんや有栖さんには見えていないかもしれない。
「っ、ばけ……」
――だけど、ステージの端にいる人魚の影を見た有栖さんが、小さく声をもらした。
ちょうどマイクを口もとから離していたから、その声はお客さんには届かなかったみたいだけど、真っ青な顔をしている。
そして、それは潤さんも同じだった。
表情を強張らせて、人魚の影を警戒するようにチラチラ見つめている。
(もしかして、潤さんたちにも見えてるの?)
――その時、こちらをみた星穏さんと、一瞬目が合った。
星穏さんは、わたしを見て、小さくうなずいた。
その目からは、わたしを信頼してくれていることが伝わってくる。
“おおきに! でも、無茶だけはせんようにな!”
守るって伝えた時、まぶしい笑顔でそう言ってくれた星穏さんの声を、思い出した。