反抗期の七瀬くんに溺愛される方法

夏樹side⑮

 教室に入ると、目に入ったのは小春の姿だった。

 ――俺は、あいつにどこまで近づいていいんだろう。

 思わず声をかけた。
「小春!」
 息が少し上がっているのは、走ってきたせいだけじゃない。

 振り向いた小春の顔が、少し強張ったように見えた。
 あんな顔をさせたかった訳じゃないのに。

 何度電話しても、LINEしても、返信はない。
 それでも、話したかった。

 言い訳をしたかったわけじゃない。
 ただ、俺がどれだけ小春のことを想っているか、伝えたかった。

 でも、それさえも、もう叶わないのかもしれない。
 それくらい、俺は酷いことをしたから。

 席の横まで歩き、真剣な眼差しで言う。
「ちょっと、話そう」

 小春が震える声で言う。
「なつくんのことも、私のことも……嫌いになりたくないから」

 その言葉を聞いて確信した。
 小春を傷つけてしまった。

 やっと向き合えた恋だったのに。
 誰よりも大事にすると誓ったのに。

――何やってんだ、俺。

 胸の奥が締めつけられる。
 悔しさと焦り、後悔と、愛しさがぐちゃぐちゃに絡まって、どうしようもない。

 俺はただ、小春から離れるしかなかった。
< 135 / 157 >

この作品をシェア

pagetop