反抗期の七瀬くんに溺愛される方法
第16章 波乱の修学旅行
集合場所の校門前は、朝の光で少し眩しかった。
キャリーケースのタイヤが転がる音と、クラスメイトの笑い声が入り混じっている。
修学旅行――いよいよ、この日が来た。
「おはよ、小春!」
凛が大きく手を振りながら走ってくる。
リュックを背負って、いつもより少し髪を巻いていた。
そのはしゃいだ笑顔につられて、私も自然と笑みがこぼれる。
「ちゃんと寝た? ほら、顔むくんでない?」
「ちょっとだけ寝坊したけど……たぶん平気」
「よし、ならオッケー!」
凛が肩を叩いた瞬間、背後から聞き慣れた声がした。
「……おい、小春」
振り返ると、夏樹が立っていた。
片手でキャリーを引きながら、少し眠たそうに頭をかいている。
寝ぐせのついた髪を無理に整えたせいで、いつもよりラフな印象だ。
心臓がどくんと跳ねる。
何か言おうとして、息が詰まった。
あの夜の涙、あの言葉――全部が一瞬で蘇る。
夏樹が、ゆっくりと口を開きかけた。
「小春、その――」
でも私は、反射的に顔をそらしてしまった。
見るのが怖かった。
目が合ったら、全部あふれ出してしまいそうで。
「……おはよ、凛。行こっか」
無理やり明るい声を出して、凛の腕を取る。
凛は一瞬きょとんとしたが、すぐに何も言わず頷いた。
背後で、夏樹が小さく息を吐く音が聞こえた気がした。
(……ごめん、なつくん)
心の中で小さく呟く。
本当は、話したかった。
でも、まだ勇気が出ない。
朝の光が差し込む校庭の中で、私たちは別々の方向へ歩き出した。
キャリーのタイヤがアスファルトを転がる音が、妙に遠く感じた。
キャリーケースのタイヤが転がる音と、クラスメイトの笑い声が入り混じっている。
修学旅行――いよいよ、この日が来た。
「おはよ、小春!」
凛が大きく手を振りながら走ってくる。
リュックを背負って、いつもより少し髪を巻いていた。
そのはしゃいだ笑顔につられて、私も自然と笑みがこぼれる。
「ちゃんと寝た? ほら、顔むくんでない?」
「ちょっとだけ寝坊したけど……たぶん平気」
「よし、ならオッケー!」
凛が肩を叩いた瞬間、背後から聞き慣れた声がした。
「……おい、小春」
振り返ると、夏樹が立っていた。
片手でキャリーを引きながら、少し眠たそうに頭をかいている。
寝ぐせのついた髪を無理に整えたせいで、いつもよりラフな印象だ。
心臓がどくんと跳ねる。
何か言おうとして、息が詰まった。
あの夜の涙、あの言葉――全部が一瞬で蘇る。
夏樹が、ゆっくりと口を開きかけた。
「小春、その――」
でも私は、反射的に顔をそらしてしまった。
見るのが怖かった。
目が合ったら、全部あふれ出してしまいそうで。
「……おはよ、凛。行こっか」
無理やり明るい声を出して、凛の腕を取る。
凛は一瞬きょとんとしたが、すぐに何も言わず頷いた。
背後で、夏樹が小さく息を吐く音が聞こえた気がした。
(……ごめん、なつくん)
心の中で小さく呟く。
本当は、話したかった。
でも、まだ勇気が出ない。
朝の光が差し込む校庭の中で、私たちは別々の方向へ歩き出した。
キャリーのタイヤがアスファルトを転がる音が、妙に遠く感じた。