反抗期の七瀬くんに溺愛される方法
 放課後の教室。散らかった道具を片付けていると、秋がふいに近づいてきた。

「ねぇ、小春」
 声をかけられて振り向くと、彼は少し照れたように笑っていた。

「文化祭でさ、16時のチャイムを一緒に聞いた2人は結ばれるってジンクス、知ってる?」
「えっ、なにそれ?」
 思わず笑ってしまう。そんな噂があったなんて、全然知らなかった。

 秋は肩をすくめながら、軽い調子で言う。

「僕も今聞いたばっかりなんだけどさ。……小春のこと、誘ってもいい?」

 さらりとした言い方なのに、瞳がまっすぐで、冗談に聞こえない。

 胸が一瞬だけ高鳴った。
「え?私……?」
 つい口ごもると、秋はくすっと笑った。
「もちろん」

 その瞬間――
 視線を感じて振り返ると、少し離れた場所で机を運んでいた夏樹がこちらをじっと見ていた。

 気のせいか、表情がさっきよりもずっと固い。
 けれど、すぐにそっぽを向いてしまった。

 ――心臓が、また苦しくなる。
 秋のまっすぐな笑顔と、夏樹の無言の背中。
 その両方が、胸の奥を締め付けて離さなかった。
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