もしも、あっちの部活を選んだら?
六月最後の土曜日。今日はバドミントンの大会の日。
あれからしばらく、まともに部活に行くことができなかった。
周りの人が全員敵に見えてくる。私が負ければ喜んで、誰も私の勝利を望んでいない。
負けるのが怖くて、コートに立つことができなかった。
今度負けたらまた一歩、天才から遠ざかってしまう。
そう思ったら試合するのが怖くてできなかった。
コウとも一度も口をきいていない。
すれ違うたびにコウから挨拶をされた。だけど私は一度も返事をしなかった。
コウに裏切られた気がして、顔を直視できなかった。
私、思ってた以上にコウのことで傷ついているんだ。
ふと気がつくとコウのことを考えている。
小学生の時は何も疑問に思わずコウと遊んで笑っていた。
こうやって何年もずっとコウと笑っていられると思っていた。
コウはスポーツ万能で私はうまくできないけど。
コウに教えてもらったりしながら仲良くできるって無条件に思ってた。
でも現実はそうじゃなかった。
バドミントンが私とコウの仲を引き裂いたんだ。
大会の場所は前に練習試合で行った中学校だ。
東先輩には大会に出るのをやめますって伝えた。
そして部活もやめたいって話したんだよね。
そしたら東先輩が「大会に出なくてもいいから、見においでよ」って言ってきた。
「部活をやめるかどうかは大会を見てからでもいいでしょ」って。
しぶしぶだけど、私はうんって頷いてしまったんだ。
重たい体を何とか起こして家を出る。
みんなの集合時間から一時間くらい遅れて駅に到着した。
この時間ならそろそろ一試合目が始まっているかもしれないな。
そんなことを思いながら改札口を通り、順番待ちの列に並ぶ。
時間通りに電車が来る。一瞬、行くのをやめようかと思ったけど電車に乗り込んだ。
空いている席を見つけて座り込む。
もふもふとした座椅子に吸い込まれるような心地がする。
電車が動き出す。ただ座っているだけなのに大会の場所まで運んでくれる。
私の知らないところで世界は勝手に動いている。
今日でバドミントン部をやめるかもしれない。
そう思うと少しだけ寂しい気もしてきた。
それと同時に他の部活を選んでいたら、なんてことを考えてしまう。
バスケ部を選んでいたら美優と一緒にコートに立っていたのかな?
小学校の時に習っていたテニスを選んでいたらどうなっていたんだろう?
きっと今よりはよかった気がする。
こんな暗い気持ちで電車に乗ることはなかったはずだ。
それに、コウとだって喧嘩とかしなかったかも。
目を瞑るとコウの笑顔が頭に浮かぶ。小学生の頃から何度も見てきた笑顔。
私はコウにずっと助けてもらっていたんだ。
それなのに、コウにひどいことを言ってしまった……。
コウにちゃんと謝りたい。
私にとってコウは大切な存在なんだ。
コウとの思い出が浮かんでは消え、浮かんでは消えを繰り返す。
待って、どこにも行かないで。
私のそばから離れないで。
そう思った瞬間、目の前が真っ暗になった。
ハッとして目を覚ます。
「ここはどこ?」
私は一人真っ暗闇の中に立ち尽くしていた。
あれからしばらく、まともに部活に行くことができなかった。
周りの人が全員敵に見えてくる。私が負ければ喜んで、誰も私の勝利を望んでいない。
負けるのが怖くて、コートに立つことができなかった。
今度負けたらまた一歩、天才から遠ざかってしまう。
そう思ったら試合するのが怖くてできなかった。
コウとも一度も口をきいていない。
すれ違うたびにコウから挨拶をされた。だけど私は一度も返事をしなかった。
コウに裏切られた気がして、顔を直視できなかった。
私、思ってた以上にコウのことで傷ついているんだ。
ふと気がつくとコウのことを考えている。
小学生の時は何も疑問に思わずコウと遊んで笑っていた。
こうやって何年もずっとコウと笑っていられると思っていた。
コウはスポーツ万能で私はうまくできないけど。
コウに教えてもらったりしながら仲良くできるって無条件に思ってた。
でも現実はそうじゃなかった。
バドミントンが私とコウの仲を引き裂いたんだ。
大会の場所は前に練習試合で行った中学校だ。
東先輩には大会に出るのをやめますって伝えた。
そして部活もやめたいって話したんだよね。
そしたら東先輩が「大会に出なくてもいいから、見においでよ」って言ってきた。
「部活をやめるかどうかは大会を見てからでもいいでしょ」って。
しぶしぶだけど、私はうんって頷いてしまったんだ。
重たい体を何とか起こして家を出る。
みんなの集合時間から一時間くらい遅れて駅に到着した。
この時間ならそろそろ一試合目が始まっているかもしれないな。
そんなことを思いながら改札口を通り、順番待ちの列に並ぶ。
時間通りに電車が来る。一瞬、行くのをやめようかと思ったけど電車に乗り込んだ。
空いている席を見つけて座り込む。
もふもふとした座椅子に吸い込まれるような心地がする。
電車が動き出す。ただ座っているだけなのに大会の場所まで運んでくれる。
私の知らないところで世界は勝手に動いている。
今日でバドミントン部をやめるかもしれない。
そう思うと少しだけ寂しい気もしてきた。
それと同時に他の部活を選んでいたら、なんてことを考えてしまう。
バスケ部を選んでいたら美優と一緒にコートに立っていたのかな?
小学校の時に習っていたテニスを選んでいたらどうなっていたんだろう?
きっと今よりはよかった気がする。
こんな暗い気持ちで電車に乗ることはなかったはずだ。
それに、コウとだって喧嘩とかしなかったかも。
目を瞑るとコウの笑顔が頭に浮かぶ。小学生の頃から何度も見てきた笑顔。
私はコウにずっと助けてもらっていたんだ。
それなのに、コウにひどいことを言ってしまった……。
コウにちゃんと謝りたい。
私にとってコウは大切な存在なんだ。
コウとの思い出が浮かんでは消え、浮かんでは消えを繰り返す。
待って、どこにも行かないで。
私のそばから離れないで。
そう思った瞬間、目の前が真っ暗になった。
ハッとして目を覚ます。
「ここはどこ?」
私は一人真っ暗闇の中に立ち尽くしていた。