もしも、あっちの部活を選んだら?
バスケ部一年、頑張ります!

バスケットボールとハンバーガー

「お、やっと真澄が起きた」

目を開くとコウが目の前にいて笑っていた。
あたりを見渡す。どうやら電車の中にいるみたい。

あれ? 今まで何をしていたんだろう。

「私、なんで電車の中にいるの?」

「おいおい、まだ寝ぼけてるのか?」

コウが呆れた様に笑っている。

「今、バスケの練習試合の帰りだろ。真澄、ぐっすりと眠ってたぜ」

よーく周りを見ると美優や先輩たちもいた。

「ほら、もうすぐ駅に着くぞ。このまま起きなかったらどうしようかと思ったよ」

コウの言った通り、電車はすぐに私たちが降りる駅に到着した。
バスケ部のメンバー全員で電車から降りる。

駅を出てすぐにある広間で軽くミーティングをして解散になった。

「真澄、ハンバーガーでも食べていくか?」

私のお腹が鳴っていたのが聞かれたのかコウの誘いに乗ることにした。

美優にも声をかけたけど、昼もハンバーガーを食べたから花村さん達と一緒に帰ってしまった。

ビッグサイズのハンバーガーと期間限定のエビマヨバーガーを頼む。
それを見たコウに「昼と同じくらいのボリュームを食べるな」と笑われた。

私にとってはハンバーガーを食べたのはしばらく前の気分だ。

コウはチーズバーガーとポテトを頼み、コーラを飲んでいる。

コウがパクリとチーズバーガーを食べる。その姿が小学生の頃を思い出させて可愛く見えた。

「コウって昔からチーズバーガーが好きだよね」

「ハンバーグにチーズって最強の組み合わせだろ」

ふふ。やっぱりコウは昔から変わらないな。

「なあ、電車の中で夢でも見ていたのか?」

コウの一言に思わずドキッとする。

「私、寝言で何か言ってた?」

「何も言ってないけど、たまにうなされてたぞ」

コウって本当に私のことをよく見ているんだね。
今の私ならそれがどれだけありがたいことかしっかりわかる。

夢を見ていた。長い長い夢を。しかもそれも一つだけじゃない。

バスケ部で二年生になった夢。
テニス部に入った夢。
そしてバドミントン部に入った夢。

どの夢も今の私とは違う。まるで別な世界にいる自分を見ているようだった。
夢で見た出来事をどれも鮮明に思い出すことができる。

そしてどの夢でもコウは私と同じ部活を選んでいた。

「いい夢だったのか?」

「うーんどうだろう」

「何だよ、それ」

そう言いながらコウはポテトをつまんだ。

「いいか悪いかわからないけど、見れてよかったよ」

「だったらいっか」

コウがうめーと言いながらコーラを飲む。
コウの笑顔を見ていると私まで何だか楽しい気持ちになってくる。

「コウはさ、何でバスケ部に入ったの?」

どんなスポーツもすぐにこなせるコウが何でバスケ部を選んだのか、いつも近くにいるのに聞いたことがなかった。

「うーん、バスケが面白そうだったからかな」
珍しくコウの答えが煮えきらない感じがした。

それに、それだけが理由なら夢の中で私と一緒にコウが部活を変えた理由にはならない。

「他に理由がないの?」

「まあ、真澄がバスケ部に入るってのも聞いたからかな」

え? そうなの?

予想外の答えにドキッとした。

「真澄が部活でちゃんとやれるか心配だったからな。運動、そんなに得意じゃないだろ」

なーんだ、そういうことか。
コウって本当に私のことになると心配性なんだな。

「ふーん、そうだったんだ」

「何だよ、悪いかよ」

「別に。でもそのおかげで色々助かったよ」

コウがきょとんとした顔で私を見てくる。

「なんだ、色々助かったって?」

「何でもない。こっちの話」

「ニヤニヤして何だか怪しいな」

コウは私の見た夢の話はわからないもんね。
私だけが知っているコウがいるっていうも何かいいかも。

ビッグサイズのハンバーガーが食べ終わった。
うん、やっぱりここのハンバーガーはいつ食べても美味い。

「真澄っていつもハンバーガーを美味しそうに食べるよな」

「そうかな?」

「俺は真澄のそういうところ好きだけどな」

コウからの不意の一言に心臓がドクンと飛び跳ねる。

「ちょっと、急に何言うのよ」

「いや、今のは別に……」

わかっている、わかっている。コウとは私はただの腐れ縁。
だけど乙女心としては急に好きなんて言われたらびっくりしちゃうよ。

それにコウからそんなふうに言われると嬉しくなるし……。
って私は一体、何を考えているんだよ〜。

そうだ。私はコウに言わなきゃいけないことがある。
これは自分との約束。私しか言えないことだ。

「あのさあ、コウ」

いざ伝えようとすると何だか緊張してしまう。
言い淀む私の姿が面白いのかコウは「おい、何年一緒にいると思ってるんだよ」と笑っていた。

「真澄が俺に言いにくいことなんてないだろ」

コウはやっぱり乙女心がわかってないな。
近くにいるからこそ、言いにくいことだってあるんだよ。

「いつもそばにいてくれて、助けてくれてありがとう」

ふうー、言っちゃったー。

顔が何だかすごく暑い。ちょっと急に店内の冷房止まっちゃったんじゃないの?

「何だよ、急に改まって」

「別に。今も私にハンバーガー付き合ってくれたりするし」

ごめんね、私。百パーセント素直には言えなかった。
けど、ちゃんと伝えたのは大きな一歩だよね。

私もコウの近くにいたい。そのことに気がついた。
だから言える時に言っておかないとね。

「いつもありがとう、コウ」

「ま、まあよ。真澄こそ何かあればいつでも言ってくれよ」

普段なら軽く聞き流すいつもの台詞も今はしっかり心に届く。

コウは本当にいつでも助けてくれた。
時には冗談交じりに、時には真剣に、時には耳の痛いことも言ってくれた。

私はそんなコウのことが好きなんだ。
だから私もコウのそばにずっといたいんだ。

……って、今、心の中で何を言っているんだ?

「何か店内急に暑くなってきたな」

「そ、そうだね」

コウが甘い甘いと言いながら急いでコーラを飲む。

エビマヨバーガーをパクッと口に入れた。
コウが甘い甘いと言っているせいかエビマヨバーガーもとびきり甘い味がした。
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