壁の中の彼氏
 ジワリと浮かんで流れていく汗が心地良い。
 とにかく、男が自分のことを思い出してくれなければ、明人であるかどうかもわからない。
 これから根気強く明人のついての情報を出していく他はなさそうだった。

☆☆☆

それは静かな夜だった。
 月は雲で陰って虫の声も聞こえてこない。
 ベッドに入った亜美はうつらうつらしはじめたころ、「あぁぁ!!」と、突然大きな声が聞こえてきて飛び起きた。
 今の声は壁の中から聞こえてきた。
 亜美はすぐに部屋の電気をつけて壁と向き合って座った。
「どうしたの? なにかあった?」
「飯島明人……飯島明人って言ったよな?」
 その声はひどく動揺して揺れていた。
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