壁の中の彼氏
「前の住人が出て行ったのは、俺の声を聞いて怯えたからだ。せっかくの新居だったのに、悪いことをした」
「他の人もあなたの声が聞こえるの?」
「君ほどはっきりとは聞こえないみたいだ。会話ができた試しはないから」
「どうして私とは会話できるの?」
「それは……波長が合ったからかな」
 同じ小説家をいう夢を持った者同士が、偶然この家で出会った。
 それまで彼はずっとひとりでここにいて、そのうちに自分のことを忘れて行ってしまった。
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