壁の中の彼氏
 久しぶりに連絡を取った担当編集者へ、そう文章を添えてさきほど書き終えたばかりの作品を添付した。
 タイトルは『壁の中の彼氏』。
 恋人らしいことなんてなにもしていない。
 だけど確かに心を惹かれた、始めての存在だった。
 告白していないから彼氏じゃないと突っぱねられるかもしれないけれど、そこは目をつむってもらうつもりだ。
 なにせこれからは彼の残したネタを書かなきゃいけない。
 そのネタは膨大な数になるから、何年かかるかわからない。
 タイトルに『彼氏』とつけるくらい、きっと笑って許してくれるだろう。
「ねぇ、そうだよね?」
 亜美は白く塗り直された壁に向けて声をかける。
返事はない。
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