【完結】春の庭~替え玉少女はお飾りの妻になり利用される~
18 少女の私と、キャンベル公爵家
王都とは思えないほどの緑あふれる大きな敷地に、公爵邸はあった。
タウンハウスの「ハウス」という規模ではなく、「パレス」と呼べるほどの立派なお屋敷で、車止めから馬車を降りると、20人ほどの使用人が出迎えてくれた。
その先頭には、黒髪の長身の男性が立っていた。
「ようこそお越しくださいました。オリヴィア様。私はハリー様の側近を務めるクリスと申します。」
クリス様は20才後半と思われる長身の青年で、艶やかな黒髪とアッシュブルーの瞳が印象的な方だ。
美麗な容姿で私に優雅に微笑む。
「お疲れでしょうが、明日の結婚式の打ち合わせをお願いしたいので、お部屋にご案内いたします」
「明日が結婚式ですか?」
ジョンソンさんが驚きの声をあげる。
「はい。急で申し訳ないのですが、ハリー様たってのご希望ですので」
そうクリス様が答えると、ジョンソンさんはニヤニヤしながら私を見つめる。
「愛されておられますねぇ」
「ジョンソン氏のお部屋もご用意しておりますので、今日はこのままお泊りいただき、明日、婚姻届のサインが済んだら、早急に手続きをお願いいたします」
そうして私は、クリス様に私の私室とされる4階の部屋に案内された。
「ここが公爵夫人の部屋になります」
ピンクと花柄を基調とした、とても可愛らしい部屋だ。
夫人というより令嬢の部屋のよう……
「この室内ドアの向こうが夫婦の寝室。そのまた向こうにハリー様の私室や執務室などがあります」
メイドがお茶を入れてくれたので、二人ともソファーに腰かける。
クリス様から、明日の式の簡単な流れと出席者の説明をされる。
沢山の貴族の方の名を告げられたが、社交界に縁のない私には誰だかさっぱり分からない。
ただ、ハリー様の御父上であるキャンベル公爵様と、来賓として第三王子殿下が出席されることだけは分かった。
「では、私はこれにて失礼いたします。何かありましたら、この二人の専属メイドをお呼び下さい」
「あ…あの」
「はい?」
「ハリー様は……?」
「……只今、執務が立て込んでおりまして外出されております。夕食の時間には戻られると思いますので、その際にはお会いできるかと」
その後、部屋着に着替えさせてもらい部屋でくつろぐことになった。
途中、トルソーにかけられた豪華なウエディングドレスを見せられたが、この沈み込むようなソファーにしろ、華やかな調度品に囲まれたこの部屋にしろ……こんな立派な屋敷の主と私が結婚するなんて、全く現実感がなくてまるで夢を見ているようだった。
日が暮れて、部屋に明かりが灯される時間になると、メイドが夕食の載ったワゴンを押して入ってきた。
「ハリー様は今日はお戻りになられないそうなので、クリス様が『おひとりならお部屋でお食べになる方がオリヴィア様が落ち着かれるのではないか』と……」
食事を終えると、湯あみの用意をしてくれ、その日は早めに就寝を促された。
雲のように柔らかい寝具に包まれ、あっという間に眠ってしまった。
全く夢も見なかった。
タウンハウスの「ハウス」という規模ではなく、「パレス」と呼べるほどの立派なお屋敷で、車止めから馬車を降りると、20人ほどの使用人が出迎えてくれた。
その先頭には、黒髪の長身の男性が立っていた。
「ようこそお越しくださいました。オリヴィア様。私はハリー様の側近を務めるクリスと申します。」
クリス様は20才後半と思われる長身の青年で、艶やかな黒髪とアッシュブルーの瞳が印象的な方だ。
美麗な容姿で私に優雅に微笑む。
「お疲れでしょうが、明日の結婚式の打ち合わせをお願いしたいので、お部屋にご案内いたします」
「明日が結婚式ですか?」
ジョンソンさんが驚きの声をあげる。
「はい。急で申し訳ないのですが、ハリー様たってのご希望ですので」
そうクリス様が答えると、ジョンソンさんはニヤニヤしながら私を見つめる。
「愛されておられますねぇ」
「ジョンソン氏のお部屋もご用意しておりますので、今日はこのままお泊りいただき、明日、婚姻届のサインが済んだら、早急に手続きをお願いいたします」
そうして私は、クリス様に私の私室とされる4階の部屋に案内された。
「ここが公爵夫人の部屋になります」
ピンクと花柄を基調とした、とても可愛らしい部屋だ。
夫人というより令嬢の部屋のよう……
「この室内ドアの向こうが夫婦の寝室。そのまた向こうにハリー様の私室や執務室などがあります」
メイドがお茶を入れてくれたので、二人ともソファーに腰かける。
クリス様から、明日の式の簡単な流れと出席者の説明をされる。
沢山の貴族の方の名を告げられたが、社交界に縁のない私には誰だかさっぱり分からない。
ただ、ハリー様の御父上であるキャンベル公爵様と、来賓として第三王子殿下が出席されることだけは分かった。
「では、私はこれにて失礼いたします。何かありましたら、この二人の専属メイドをお呼び下さい」
「あ…あの」
「はい?」
「ハリー様は……?」
「……只今、執務が立て込んでおりまして外出されております。夕食の時間には戻られると思いますので、その際にはお会いできるかと」
その後、部屋着に着替えさせてもらい部屋でくつろぐことになった。
途中、トルソーにかけられた豪華なウエディングドレスを見せられたが、この沈み込むようなソファーにしろ、華やかな調度品に囲まれたこの部屋にしろ……こんな立派な屋敷の主と私が結婚するなんて、全く現実感がなくてまるで夢を見ているようだった。
日が暮れて、部屋に明かりが灯される時間になると、メイドが夕食の載ったワゴンを押して入ってきた。
「ハリー様は今日はお戻りになられないそうなので、クリス様が『おひとりならお部屋でお食べになる方がオリヴィア様が落ち着かれるのではないか』と……」
食事を終えると、湯あみの用意をしてくれ、その日は早めに就寝を促された。
雲のように柔らかい寝具に包まれ、あっという間に眠ってしまった。
全く夢も見なかった。