【完結】春の庭~替え玉少女はお飾りの妻になり利用される~
43 アースキン伯爵令嬢、ミュリエルの過去③
その3日後、我が家の専任弁護士のジョンソン氏がやってきて、私たち家族となぜかオリヴィアが同席での話し合いがあった。
そこで告げられたのは、恐ろしい事実!
あのオリヴィアがお父さまの庶子で、私の姉だと言うのよ!
あぁこの子はこれを知っていたから、あんなに無表情で堂々としてたんだわ!
本来、メイドはお母さまや私にへりくだって媚を売るものなのに!
「お前がわたくしの姉ですって!? 許せないわ!」
絶対認めないわ!
だが、ジョンソン氏はオリヴィアを我がアースキン伯爵家の令嬢だと認める書類と、公爵令息ハリー様と婚約を結ぶ書類をまとめ上げ、退出していった
「オリヴィアがいなくなったら来月からのコンサートはどうするのよ!」
まだ、私の婚約者は決まっていないのよ!
「早急にミュリエルの婚約をまとめましょう! 確かスタンリー侯爵家から婚約の申し出があったわよね! それを受けて、婚約準備のためとかで、コンサートはキャンセルしましょう」
「いやよ! どうしてオリヴィアが公爵家でわたくしは格下の侯爵家なの! わたくしがハリー様と婚約してはダメなの?」
私こそが、貴族最高位の公爵夫人にふさわしいわ!
「同じ伯爵令嬢じゃない! むしろわたくしの方が正当な……正妻の娘よ!」
「ハリー様はコンサートの替え玉の事をご存じなんだ」
「え!?」
「世間に知られたくなかったら、オリヴィアを娘と認め、婚約者としてよこせと言われたのだ」
「そんな……!」
公爵様に替え玉がバレていたなんて……どこまでこの話は伝わっているの? もし社交界中にバレていたら……
部屋に戻る途中のオリヴィアを突き飛ばしてやった。
「この疫病神! お前が姉なんて寒気がするわ! 知っていたお母様はどれほど苦しんだでしょう! 私からピアノを奪って、才能をひけらかして! 舞台で笑って挨拶するわたくしを道化だと笑っていたのでしょう!? 我が家の不幸は全てお前のせいよ!」
不安でたまらない! こんな事になったのはオリヴィアのせいよ!
「しかも公爵夫人になるというの? 娼婦の子のお前が? ほほほ、誰もお前なんて認めないし、愛されるわけなんかないわ! お前なんて、お前なんて、死んでしまえばいい!」
その後、お母さまはすぐスタンリー侯爵との婚約をまとめた。
初めて顔合わせをしたスタンリー侯爵は、背は高いが痩せぎすで、金髪碧眼の神経質そうなキツネ顔の30歳の男だった。
私はまだ18歳よ?
身分は良いとして、もう少し見目の良い方はいなかったのかしら……例えばハリー様の側近だった、ハワード子爵家のクリス様みたいな方……
でも、婚約式は盛大だったし、招待客も高位貴族ばかり。婚約の証に贈られた大粒のピンクダイヤのネックレスも素晴らしかったので、一応は満足した。
そこで、ピアノの演奏をリクエストされたのだが、お母さまとの打ち合わせ通りのお芝居で上手く乗り切れた。
「実は以前、スプリング新聞社にコンサートを酷評されまして、それがあまりに辛くて……それ以来、指が思うように動かなくなってしまいましたの」
スプリング新聞社は低俗なタブロイド紙で、面白おかしく脚色した暴露記事を売りにしている新聞社だ。私のコンサートの事も酷評というものではなく、「貴族のご令嬢だから結婚をされるとピアニストを辞めざるを得ないだろう」なんて記事だったけど。
涙ながらに訴える私に、みな同情してくれ、話題はスプリング新聞社の悪口に変わっていく。
お母さまとは、始めは指をケガした事にしようと話していたが、日常生活で見破られる可能性もあったので、『心の病』に変更したのだ。
これなら詰め寄られれば、さらに悪化すると言えるし、一生治らなくても問題ない。
そこで告げられたのは、恐ろしい事実!
あのオリヴィアがお父さまの庶子で、私の姉だと言うのよ!
あぁこの子はこれを知っていたから、あんなに無表情で堂々としてたんだわ!
本来、メイドはお母さまや私にへりくだって媚を売るものなのに!
「お前がわたくしの姉ですって!? 許せないわ!」
絶対認めないわ!
だが、ジョンソン氏はオリヴィアを我がアースキン伯爵家の令嬢だと認める書類と、公爵令息ハリー様と婚約を結ぶ書類をまとめ上げ、退出していった
「オリヴィアがいなくなったら来月からのコンサートはどうするのよ!」
まだ、私の婚約者は決まっていないのよ!
「早急にミュリエルの婚約をまとめましょう! 確かスタンリー侯爵家から婚約の申し出があったわよね! それを受けて、婚約準備のためとかで、コンサートはキャンセルしましょう」
「いやよ! どうしてオリヴィアが公爵家でわたくしは格下の侯爵家なの! わたくしがハリー様と婚約してはダメなの?」
私こそが、貴族最高位の公爵夫人にふさわしいわ!
「同じ伯爵令嬢じゃない! むしろわたくしの方が正当な……正妻の娘よ!」
「ハリー様はコンサートの替え玉の事をご存じなんだ」
「え!?」
「世間に知られたくなかったら、オリヴィアを娘と認め、婚約者としてよこせと言われたのだ」
「そんな……!」
公爵様に替え玉がバレていたなんて……どこまでこの話は伝わっているの? もし社交界中にバレていたら……
部屋に戻る途中のオリヴィアを突き飛ばしてやった。
「この疫病神! お前が姉なんて寒気がするわ! 知っていたお母様はどれほど苦しんだでしょう! 私からピアノを奪って、才能をひけらかして! 舞台で笑って挨拶するわたくしを道化だと笑っていたのでしょう!? 我が家の不幸は全てお前のせいよ!」
不安でたまらない! こんな事になったのはオリヴィアのせいよ!
「しかも公爵夫人になるというの? 娼婦の子のお前が? ほほほ、誰もお前なんて認めないし、愛されるわけなんかないわ! お前なんて、お前なんて、死んでしまえばいい!」
その後、お母さまはすぐスタンリー侯爵との婚約をまとめた。
初めて顔合わせをしたスタンリー侯爵は、背は高いが痩せぎすで、金髪碧眼の神経質そうなキツネ顔の30歳の男だった。
私はまだ18歳よ?
身分は良いとして、もう少し見目の良い方はいなかったのかしら……例えばハリー様の側近だった、ハワード子爵家のクリス様みたいな方……
でも、婚約式は盛大だったし、招待客も高位貴族ばかり。婚約の証に贈られた大粒のピンクダイヤのネックレスも素晴らしかったので、一応は満足した。
そこで、ピアノの演奏をリクエストされたのだが、お母さまとの打ち合わせ通りのお芝居で上手く乗り切れた。
「実は以前、スプリング新聞社にコンサートを酷評されまして、それがあまりに辛くて……それ以来、指が思うように動かなくなってしまいましたの」
スプリング新聞社は低俗なタブロイド紙で、面白おかしく脚色した暴露記事を売りにしている新聞社だ。私のコンサートの事も酷評というものではなく、「貴族のご令嬢だから結婚をされるとピアニストを辞めざるを得ないだろう」なんて記事だったけど。
涙ながらに訴える私に、みな同情してくれ、話題はスプリング新聞社の悪口に変わっていく。
お母さまとは、始めは指をケガした事にしようと話していたが、日常生活で見破られる可能性もあったので、『心の病』に変更したのだ。
これなら詰め寄られれば、さらに悪化すると言えるし、一生治らなくても問題ない。