【完結】春の庭~替え玉少女はお飾りの妻になり利用される~
【番外編】 新婚の私と、クリス様との初夜事情③
1時間ほどして、ようやく人がはけたので、シャンパンを持って二人でテラスに逃げた。
「人気者ですね、私の妻は」
「すいません。何も答えられなくて……お仕事のお話もしたかったでしょう?」
「あれは、ただの援助の申し出ですよ。ビジネスではありませんから問題ありません」
「そう」
ほっとして、シャンパンに口をつけたら、隣でクリス様がズルズルと床に座り込んだ。
「クリス様! どうしたんですか?」
「……気持ち悪い…どうやら酔ったようです」
その手には空になったシャンパングラス。喋っていたクリス様は喉が渇いて一気に飲んでしまったのだろう。
「だ、大丈夫ですか!?」
「すいません。恰好悪いなぁ」
そういえばここ数日、クリス様はずっと体調が悪そうだった。
「私、お水貰ってきますね」
給仕の方を探していると、赤いドレスを着た女性に声をかけられた。
「貴女がキャンベル夫人?」
「……はい」
「いい加減、離縁しなさいな。由緒ある公爵家に4年もいて、子どもひとり産めない石女なんだから」
4年? 私とクリス様は結婚してまだ、1カ月もたたないのに……
「3年子無しは立派な離婚理由よ! 筆頭公爵家の血を絶やすつもり?」
あぁ~~ハリー様と結婚していた時、私はキャンベル次期公爵夫人だったから、この方は勘違いをされてるのね?
「愛人に居座られて、正夫人として恥ずかしくないの? わたくしだったらそんな事は許さないし、立派に跡継ぎを産んで見せるわ。社交だって完璧にこなすし、公爵様の心と身体を癒す事も出来てよ」
愛人ってハリー様の恋人だったジェニー嬢のことよね?
でも……身体を癒すって……
「だからさっさと離婚してその場所を明け渡して! 貴女なんか一人で大好きなピアノだけ、弾いていたらいいのよ!」
そう言って彼女は、足早に私から離れて行った。
そうよね……
私はピアノを弾いているだけで、社交もしていないし、夫人教育もまだだから公爵夫人としての屋敷の采配もクリス様任せだし、使用人たちの管理だって……。
そして、貴族の妻として一番求められる、子を産む行為さえ満足に出来ていない。
何も出来ていない自分に愕然とし、水の入ったグラスを手にトボトボとテラスに戻ると、クリス様にしなだれかかる女性が見えた。……いや、しなだれかかっているのはクリス様!?
「クリス様ったら、お疲れですのね? わたくしが介抱して差し上げますから、お部屋に行きましょう?」
その女性がねっとりとした目でクリス様見つめ、その頬をまたねっとりと撫であげる。
彼はされるがままで、その唇に彼女の唇がゆっくり近づき……
「クリス様! お水をお持ちしましたわ!」
自分でもこんな大きな声が出せたのか、と思うほどの大声が口から飛び出した。
「どなたか存じませんがありがとうございました。あとは妻である私が介抱いたしますので、もう大丈夫です!」
彼女からクリス様を引きはがし、その手にグラスを持たせる。
「飲んで下さい」
クリス様はゆっくり口をつけ、全てを飲み干すころには幾分、顔色は良くなった。
その間に側にいた女性はいなくなっていた。
給仕の手を借り、その日はそのまま王宮を後にした。王太子殿下へのご挨拶もまだだったが、クリス様があとで上手くフォローするだろう。
馬車に揺られる私の胸には、ひとつの決心が芽生えていた。
「人気者ですね、私の妻は」
「すいません。何も答えられなくて……お仕事のお話もしたかったでしょう?」
「あれは、ただの援助の申し出ですよ。ビジネスではありませんから問題ありません」
「そう」
ほっとして、シャンパンに口をつけたら、隣でクリス様がズルズルと床に座り込んだ。
「クリス様! どうしたんですか?」
「……気持ち悪い…どうやら酔ったようです」
その手には空になったシャンパングラス。喋っていたクリス様は喉が渇いて一気に飲んでしまったのだろう。
「だ、大丈夫ですか!?」
「すいません。恰好悪いなぁ」
そういえばここ数日、クリス様はずっと体調が悪そうだった。
「私、お水貰ってきますね」
給仕の方を探していると、赤いドレスを着た女性に声をかけられた。
「貴女がキャンベル夫人?」
「……はい」
「いい加減、離縁しなさいな。由緒ある公爵家に4年もいて、子どもひとり産めない石女なんだから」
4年? 私とクリス様は結婚してまだ、1カ月もたたないのに……
「3年子無しは立派な離婚理由よ! 筆頭公爵家の血を絶やすつもり?」
あぁ~~ハリー様と結婚していた時、私はキャンベル次期公爵夫人だったから、この方は勘違いをされてるのね?
「愛人に居座られて、正夫人として恥ずかしくないの? わたくしだったらそんな事は許さないし、立派に跡継ぎを産んで見せるわ。社交だって完璧にこなすし、公爵様の心と身体を癒す事も出来てよ」
愛人ってハリー様の恋人だったジェニー嬢のことよね?
でも……身体を癒すって……
「だからさっさと離婚してその場所を明け渡して! 貴女なんか一人で大好きなピアノだけ、弾いていたらいいのよ!」
そう言って彼女は、足早に私から離れて行った。
そうよね……
私はピアノを弾いているだけで、社交もしていないし、夫人教育もまだだから公爵夫人としての屋敷の采配もクリス様任せだし、使用人たちの管理だって……。
そして、貴族の妻として一番求められる、子を産む行為さえ満足に出来ていない。
何も出来ていない自分に愕然とし、水の入ったグラスを手にトボトボとテラスに戻ると、クリス様にしなだれかかる女性が見えた。……いや、しなだれかかっているのはクリス様!?
「クリス様ったら、お疲れですのね? わたくしが介抱して差し上げますから、お部屋に行きましょう?」
その女性がねっとりとした目でクリス様見つめ、その頬をまたねっとりと撫であげる。
彼はされるがままで、その唇に彼女の唇がゆっくり近づき……
「クリス様! お水をお持ちしましたわ!」
自分でもこんな大きな声が出せたのか、と思うほどの大声が口から飛び出した。
「どなたか存じませんがありがとうございました。あとは妻である私が介抱いたしますので、もう大丈夫です!」
彼女からクリス様を引きはがし、その手にグラスを持たせる。
「飲んで下さい」
クリス様はゆっくり口をつけ、全てを飲み干すころには幾分、顔色は良くなった。
その間に側にいた女性はいなくなっていた。
給仕の手を借り、その日はそのまま王宮を後にした。王太子殿下へのご挨拶もまだだったが、クリス様があとで上手くフォローするだろう。
馬車に揺られる私の胸には、ひとつの決心が芽生えていた。