【完結】春の庭~替え玉少女はお飾りの妻になり利用される~

【番外編】 新婚の私と、クリス様との初夜事情④

 屋敷に戻り、侍従に薬をもらうとクリス様の体調は戻ったようだった。

「公爵夫人としての初めての夜会だったのに、申し訳ありませんでした。シャンパン1杯でこんな状態になった事は今までになくて……恰好悪いかったですよね、すいません」

「体調は大丈夫なんですか? 何か大変な病気とか……」

「いえ、いえ、ただの寝不足ですよ!」
 焦って答える彼だが、すぐに『まずい』という表情になる。

「夜は私と同じ時間にベッドに入っていますよね?」

「……」

「私がいたら眠れませんか?」

「……」

「別の部屋で……」

「嫌です!」
 最後まで言わせず、否定された。

「オリヴィアと一緒に眠りたい……その気持ちは本当です。ですが……」

「もしかして閨がしたいとか……我慢してらっしゃる?」
 それは男の人の本能だと、むかし母が言っていた。

「……そうです! そうですよ!」
 吐き捨てるように答えてくる。

「恰好悪いついでに白状しますよ! だって好きな女性が隣で寝てるんですよ? そこでグースカ寝れる男なんていませんよ! 『焦らなくて良い』なんて格好つけておいて、所詮私もそこら辺の男と同じなんですよ」


 彼は起き上がりベットボードにもたれて座り、不貞腐れた表情を私に見せる。

 何だか可愛い。
 男の人を可愛いと思うなんて不思議な感じだわ。



 でもそれより、頑張るって決めたのよねオリヴィア!
 勇気を出すのよ!

 私は弱気を蹴散らかすかのようにベッドに登り、座っている彼の身体をまたぎ、その太ももに座る。
 
「え? オリヴィア……」

 頑張れ私! 彼を失いたくないんでしょう!

「……私を抱いてくれませんか?」

「え?」

「私は正真正銘、貴方の妻になりたいんです!」

「…すいません! 変な事を言って……貴女に無理強いするつもりはなかったんです! 」

 クリス様はおろおろとし、私の身体を太ももから降ろそうとする。

「無理強いでいいんです! だって……だって……私はクリス様を他の人に取られたくない!」

 驚きの表情でクリス様が、私を見つめた。

「今日の夜会で、クリス様がすっごく人気があるんだって知りました」

「え?」

「今まで夜会は一人で行かれていたんですよね?」

「えぇまぁ。独身でしたから……」

「たくさんの女性にアプローチされたんじゃありませんか?」

「……」

「……黙ってるってことはイエスなんですよね」

 クリス様の大きな身体を抱きしめる。
 こうすると、顔が見えないから恥ずかしさも半減する。

「右手以外も私に全部ください」

 私の胸に当たっているクリス様の胸が大きく跳ね、その後細かく揺れる。
 笑っている。

「代わりに貴女を私にくださると?」

「……はい」

 するとどんな早業なのか、くるりと身体の向きが変わり、私はベッドに寝てクリス様が覆いかぶさる状態になる。

「震えていますね」

「こ…これは武者ぶるいです」
< 60 / 76 >

この作品をシェア

pagetop