【完結】春の庭~替え玉少女はお飾りの妻になり利用される~
【愛読御礼番外編】公爵令嬢シャーロットの結婚①
エブリスタ様にて、トレンド #恋愛ファンタジーランキング5位を頂いた御礼番外編となります。
お楽しみ頂けたら嬉しいです!
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「お母さまあの方はどなたなの?」
「あら、シャーロットただいま」
長旅を……隣国でのコンサートツアーを終えたお母さまを玄関で出迎える。
お母さまはお父さまと結婚する前から有名なピアニストだったけど、蓄音機の普及と共にレコード化されたその演奏はさらに評判とを呼び、海外公演で1年の四分の一はこの国にいない。
「どなたなの!?」
馬車に同乗し、ここまで母を送ってきた男は誰?
「ドロイア国のコンサートを仕切って下さった興行主の息子さんのケベック様で、この国にも商用があるとかで、ここまでご一緒して下さったの」
「ジェシーとジェイコブはどうしたの?」
今回のコンサートにはマネージャー補佐のこの二人が随行していたはず。
「ケベック様が別の馬車を用意下さって、それぞれの家に帰ったと思うけど?」
「くっ!」
専属マネージャーのアリスならこんな失態はしないはずなのに!
ケガで急遽付き添ったあの二人は本当に使えないわね!
「それで、その興行主の息子とやらとずーっとご一緒に?」
「えぇ。本当は夕方の列車の予定だったでしょ? でもお昼の列車の予約をされていたケベック様が『一等客室だから座席も余っているし、ご一緒に帰りませんか』とお誘い頂いたの。せっかくだし早く家に帰りたかったからお願いしたの」
「連絡をくれれば、うちの者が駅まで迎えに行きましたわ」
「でも…急だし……使用人たちにも予定があるでしょう?」
甘い!
甘すぎるわお母さま!
完全にお母さまを狙ってるわね!その●カ息子!
35才になるお母さまだけれど、小柄で銀髪、紫水晶のような瞳を持つその姿は、どう見ても20代前半にしか見えない。
海外では『ピアノの妖精』とか『銀色の女神』なんてフレーズで呼ばれてるのよ? プロマイド写真も売られていてこの国じゃ女優並みに有名なんだから!
「はぁあああ~」
お母さまって本当に無頓着と言うか……異性からの好意に鈍感よね。
まぁ、その最たる犠牲者はお父さまだけれど。あれだけ溺愛されてて、『え?私のことを気にかけてくれてるの?』みたいに戸惑ってるのが、ちょっとムカツク。
だって私と婚約者はこんな感じなのに。
「公爵夫人は……あぁいいね。すごく綺麗だ」
公爵邸の庭の西の端にある『春の庭』を散歩するお母さまを見てほざくのは、私が12歳の時に婚約者となったサーンジュ伯爵家の次男エドガー様だ。
ブラウンの髪にブラウンの瞳。ニョキニョキと伸びた身長は私の頭一つ分大きい。
堅実な性格で、卒業した高等学院では生徒会メンバーだったそうで、生徒からの信頼も厚かったとか。
我が国では女は爵位を継げない。
ドリトス侯爵家には男児が産まれなかったので、お父さまと結婚する際、養女となったお母さまの子どもがその爵位を継ぐ予定だったんだけど、産まれたのは女の私と弟のアーサーの二人だけ。
身体の弱いお母さまに、3人目は産ませられないとお父さまが大反対したからだ。
そしてアーサーはキャンベル公爵家の跡取りだから養子には出せない。
そこで、ドリトス侯爵様は分家のサーンジュ伯爵家から次男のエドガー様を養子にすることとし、その婚約者として私を据えたのだ。
現在、エドガー様は20才、私は14才。
私が成人……18才になったら結婚する予定だ。
「シャーロットも公爵夫人みたいに髪を巻いてみたら?」
「は? 母のゆるふわな髪は天然よ。」
それにあれはね、銀髪だから似合うのよ!
私のお父さま似の真っ黒い髪じゃ似合わないの!
しかも毛量は多いし、鋼のような直毛なの! コテで巻いても2,3時間でとれちゃうの!
たとえとれなくても、この髪よ? バネをくっつけてるみたいで不格好この上ないわよ!
「へぇ~天然なんだ~さすが公爵夫人」
何がさすがよ!
あ~あ。やっと1時間たったわ。本当に退屈だった。
月に1回の婚約者とのお茶会は、いつもエドガー様がお母さまに見とれて終わる。
「もう時間ね。わたくし宿題があるので失礼するわ。エドガー様はまだここにいたいなら《《いつまでも》》いていいわよ」
「え? ちょっと! 待って」
エドガー様の呼び止める声が聞こえたけれど、あんなノンデリ男なんて無視、無視。
お楽しみ頂けたら嬉しいです!
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「お母さまあの方はどなたなの?」
「あら、シャーロットただいま」
長旅を……隣国でのコンサートツアーを終えたお母さまを玄関で出迎える。
お母さまはお父さまと結婚する前から有名なピアニストだったけど、蓄音機の普及と共にレコード化されたその演奏はさらに評判とを呼び、海外公演で1年の四分の一はこの国にいない。
「どなたなの!?」
馬車に同乗し、ここまで母を送ってきた男は誰?
「ドロイア国のコンサートを仕切って下さった興行主の息子さんのケベック様で、この国にも商用があるとかで、ここまでご一緒して下さったの」
「ジェシーとジェイコブはどうしたの?」
今回のコンサートにはマネージャー補佐のこの二人が随行していたはず。
「ケベック様が別の馬車を用意下さって、それぞれの家に帰ったと思うけど?」
「くっ!」
専属マネージャーのアリスならこんな失態はしないはずなのに!
ケガで急遽付き添ったあの二人は本当に使えないわね!
「それで、その興行主の息子とやらとずーっとご一緒に?」
「えぇ。本当は夕方の列車の予定だったでしょ? でもお昼の列車の予約をされていたケベック様が『一等客室だから座席も余っているし、ご一緒に帰りませんか』とお誘い頂いたの。せっかくだし早く家に帰りたかったからお願いしたの」
「連絡をくれれば、うちの者が駅まで迎えに行きましたわ」
「でも…急だし……使用人たちにも予定があるでしょう?」
甘い!
甘すぎるわお母さま!
完全にお母さまを狙ってるわね!その●カ息子!
35才になるお母さまだけれど、小柄で銀髪、紫水晶のような瞳を持つその姿は、どう見ても20代前半にしか見えない。
海外では『ピアノの妖精』とか『銀色の女神』なんてフレーズで呼ばれてるのよ? プロマイド写真も売られていてこの国じゃ女優並みに有名なんだから!
「はぁあああ~」
お母さまって本当に無頓着と言うか……異性からの好意に鈍感よね。
まぁ、その最たる犠牲者はお父さまだけれど。あれだけ溺愛されてて、『え?私のことを気にかけてくれてるの?』みたいに戸惑ってるのが、ちょっとムカツク。
だって私と婚約者はこんな感じなのに。
「公爵夫人は……あぁいいね。すごく綺麗だ」
公爵邸の庭の西の端にある『春の庭』を散歩するお母さまを見てほざくのは、私が12歳の時に婚約者となったサーンジュ伯爵家の次男エドガー様だ。
ブラウンの髪にブラウンの瞳。ニョキニョキと伸びた身長は私の頭一つ分大きい。
堅実な性格で、卒業した高等学院では生徒会メンバーだったそうで、生徒からの信頼も厚かったとか。
我が国では女は爵位を継げない。
ドリトス侯爵家には男児が産まれなかったので、お父さまと結婚する際、養女となったお母さまの子どもがその爵位を継ぐ予定だったんだけど、産まれたのは女の私と弟のアーサーの二人だけ。
身体の弱いお母さまに、3人目は産ませられないとお父さまが大反対したからだ。
そしてアーサーはキャンベル公爵家の跡取りだから養子には出せない。
そこで、ドリトス侯爵様は分家のサーンジュ伯爵家から次男のエドガー様を養子にすることとし、その婚約者として私を据えたのだ。
現在、エドガー様は20才、私は14才。
私が成人……18才になったら結婚する予定だ。
「シャーロットも公爵夫人みたいに髪を巻いてみたら?」
「は? 母のゆるふわな髪は天然よ。」
それにあれはね、銀髪だから似合うのよ!
私のお父さま似の真っ黒い髪じゃ似合わないの!
しかも毛量は多いし、鋼のような直毛なの! コテで巻いても2,3時間でとれちゃうの!
たとえとれなくても、この髪よ? バネをくっつけてるみたいで不格好この上ないわよ!
「へぇ~天然なんだ~さすが公爵夫人」
何がさすがよ!
あ~あ。やっと1時間たったわ。本当に退屈だった。
月に1回の婚約者とのお茶会は、いつもエドガー様がお母さまに見とれて終わる。
「もう時間ね。わたくし宿題があるので失礼するわ。エドガー様はまだここにいたいなら《《いつまでも》》いていいわよ」
「え? ちょっと! 待って」
エドガー様の呼び止める声が聞こえたけれど、あんなノンデリ男なんて無視、無視。