【完結】春の庭~替え玉少女はお飾りの妻になり利用される~
【愛読御礼番外編】公爵令嬢シャーロットの結婚②
「もう下がっていいわよ。用があったら呼ぶから一人にして」
「……はい」
自室までついてきた専属メイドのエリーを下がらせ、ベッドに寝転がる。
室内は静寂に包まれ、ぴちちちと鳥が鳴く声以外何も聞こえない。
「静かね」
お父さまがいない屋敷はものすごく静か。
お父さまがいたら、秘書たちが走り回る音やしょっちゅう来客があって、それを対応する使用人たちもバタバタしていて屋敷中が慌ただしい。
お父さまは新しく始めた海運業が波に乗ってきたので、次は貿易業を始めた。買い付けのため、世界中を飛び回り年の半分はいない。
今回は次期後継者として弟のアーサーを連れていった。
見聞を広めるためだと10か国を回る3カ月の船旅らしい。
私も行きたいと言ったが『3カ月の男所帯の船旅にお前を連れていけるわけないだろう?』って笑って流された。
お母さまもコンサートの疲れが取れたら、市井にある『春の庭』の屋敷に戻る。あそこにはウォルドグレイヴのピアノがあるから……
この巨大な公爵邸に私だけが取り残される
あと1年で中等学院は卒業だ。
卒業後、婚約者のいる貴族令嬢は、嫁ぐ準備のため家庭教師を呼んで淑女教育を受けたり、一足早く婚約者宅に入り夫人教育を受けるのが一般的だ。
高等学院に進むのはよほど成績の良い令嬢だけ……。
「成績は普通だからなぁ」
そう、悲しいかなお父さまの『見ただけですぐ覚えられる』天才的頭脳は私ではなく、弟のアーサーにだけ受け継がれてしまった。
天才児としてすでに評判で、10才なのに来年から中等学院に通う予定だ。
しかもアーサーが受け継いだのは、お母さまの妖精のような銀髪も紫水晶の瞳も……
私はお父さま似の、真っ黒な髪とアッシュブルーの瞳。
「アーサーめ。全部良いとこ取りね」
でも私にも良いとこはあったのだ。
それは絶対音感。
両親ともに持っていた絶対音感を、何故かアーサーは受け継がず私だけが受け継いだ。
それを知った両親はすぐにピアノとバイオリンを習わせた。
そして私が興味を持ったのはピアノで……小さい頃は楽しかったな。先生にも褒められて弾くのがすごく楽しかった。
だが、成長するにつれお母さまと比較され、周りから『まぁ、確かにお上手だけど…』『あら、この程度なの?』『偉大な大音楽家の子がこれ?』と批判され、私はピアノを辞めてしまった。
お母さまは「私だって子どもの頃は大したことはなかったのよ。一生懸命練習したからここまできたの」と必死に引き留められたが「お母さまのせいでピアノが嫌いになったの!」って言い返したらお母さま泣き出しちゃった。
後でお父さまにこっぴどく叱られちゃったけど「……気持ちは分かるから、辞めたいなら辞めてもいい」って言ってくれた……だから辞めちゃった。
でもひどい事を言った自覚はあったので、お母さまに謝りに行ったら、また泣きながら何度も「ごめんね。ごめんね」って謝られちゃった。
実業家として一目を置かれる、最高位貴族当主のお父さま。
偉大なる大音楽家として、国の誇りとされるお母さま。
天才児として有名な弟のアーサー。
そして私は……
「やたら身分が高いだけの凡人」
「……はい」
自室までついてきた専属メイドのエリーを下がらせ、ベッドに寝転がる。
室内は静寂に包まれ、ぴちちちと鳥が鳴く声以外何も聞こえない。
「静かね」
お父さまがいない屋敷はものすごく静か。
お父さまがいたら、秘書たちが走り回る音やしょっちゅう来客があって、それを対応する使用人たちもバタバタしていて屋敷中が慌ただしい。
お父さまは新しく始めた海運業が波に乗ってきたので、次は貿易業を始めた。買い付けのため、世界中を飛び回り年の半分はいない。
今回は次期後継者として弟のアーサーを連れていった。
見聞を広めるためだと10か国を回る3カ月の船旅らしい。
私も行きたいと言ったが『3カ月の男所帯の船旅にお前を連れていけるわけないだろう?』って笑って流された。
お母さまもコンサートの疲れが取れたら、市井にある『春の庭』の屋敷に戻る。あそこにはウォルドグレイヴのピアノがあるから……
この巨大な公爵邸に私だけが取り残される
あと1年で中等学院は卒業だ。
卒業後、婚約者のいる貴族令嬢は、嫁ぐ準備のため家庭教師を呼んで淑女教育を受けたり、一足早く婚約者宅に入り夫人教育を受けるのが一般的だ。
高等学院に進むのはよほど成績の良い令嬢だけ……。
「成績は普通だからなぁ」
そう、悲しいかなお父さまの『見ただけですぐ覚えられる』天才的頭脳は私ではなく、弟のアーサーにだけ受け継がれてしまった。
天才児としてすでに評判で、10才なのに来年から中等学院に通う予定だ。
しかもアーサーが受け継いだのは、お母さまの妖精のような銀髪も紫水晶の瞳も……
私はお父さま似の、真っ黒な髪とアッシュブルーの瞳。
「アーサーめ。全部良いとこ取りね」
でも私にも良いとこはあったのだ。
それは絶対音感。
両親ともに持っていた絶対音感を、何故かアーサーは受け継がず私だけが受け継いだ。
それを知った両親はすぐにピアノとバイオリンを習わせた。
そして私が興味を持ったのはピアノで……小さい頃は楽しかったな。先生にも褒められて弾くのがすごく楽しかった。
だが、成長するにつれお母さまと比較され、周りから『まぁ、確かにお上手だけど…』『あら、この程度なの?』『偉大な大音楽家の子がこれ?』と批判され、私はピアノを辞めてしまった。
お母さまは「私だって子どもの頃は大したことはなかったのよ。一生懸命練習したからここまできたの」と必死に引き留められたが「お母さまのせいでピアノが嫌いになったの!」って言い返したらお母さま泣き出しちゃった。
後でお父さまにこっぴどく叱られちゃったけど「……気持ちは分かるから、辞めたいなら辞めてもいい」って言ってくれた……だから辞めちゃった。
でもひどい事を言った自覚はあったので、お母さまに謝りに行ったら、また泣きながら何度も「ごめんね。ごめんね」って謝られちゃった。
実業家として一目を置かれる、最高位貴族当主のお父さま。
偉大なる大音楽家として、国の誇りとされるお母さま。
天才児として有名な弟のアーサー。
そして私は……
「やたら身分が高いだけの凡人」