【完結】春の庭~替え玉少女はお飾りの妻になり利用される~
【愛読御礼番外編】公爵令息アーサーの憂鬱⑦終
どうしてまた泣くんだ!
また僕はマズい事を言ったか?
「病気の事を黙っていてごめんなさい! 子どもが産めないと知られて婚約破棄されるのが嫌だったの! 悪口を言われても太ってるのは事実だったし、言い返せばおおごとになって、大人が権力で解決するのは惨めで嫌だった。そして反論せずにいたら王女が暴言を受けてるなんて恥ずかしい事をアーサーに知られずにすむと思って……そうしたらどんどん酷くなって収拾がつかなくなって……」
「いいじゃないか『ブクブク王女』だっけ? 言わせたいヤツに言わせておけばいい」
王太子妃殿下も言った奴のリストを控えていると仰ってたな。
うちもしっかり報復させて頂こう。
「僕だって学校じゃ『カマキリ少年』って呼ばれているんだぞ。友達なんて一人もいないし、話しかけて来るのはアンとローレンスしかしない」
「……本当に婚約者は私のままでいいの?」
「今はな。将来なんて分からないだろう? 僕たちはまだ子どもだ」
「……そうね」
「ただ僕は昨日までアンに腹が立っていた」
「え?」
「ローレンスの領地で、婚約者のシルフィーヌ嬢に会ったんだ。彼女はローレンスのために痩せてきれいに着飾って『ローレンスに綺麗に思われたい』と言っていた。君の病気を知らなかった僕は痩せようとも思わない、着飾りもしない君に腹が立っていたんだ」
「あ…ごめ…」
「謝るなよ! 別に僕は痩せた女性が好きじゃないし、あえて言えば容姿に好みはない。ただ婚約者に良く思われたいと、行動している彼女のいじらしさを羨ましく思って……その……悔しかったんだ。僕は君にそこまで思われていないんだと思って」
「ちが…」
「そして全てを知った今、君が僕のために勉強を頑張ってくれていた事を知って、嬉しく思っている」
熱が頬に上がるのが分かる。
殴られて変色しているから、分からないのが救いだ。
アンのぽっちゃりした両手を握り、上目使いで見つめる
とたんに彼女の顔が赤く染まる。
この顔が使えるまでとことん使ってやるぞ、ハゲるまで。
「アン。次の誕生日にドレスを贈るよ。君は本当はフリルがいっぱいついた、明るい色のドレスが好きだろう?」
病気になるまでいつも、フリルがいっぱいのドレスを着ていた。
「でも…より太ってみえるもの……」
「それはデザイナーの腕次第。それに中傷する女子がいても、僕が潰すから安心して。君は小さな頃みたいに、好きなドレスを好きなように着ていいんだ」
号泣するアンを僕は抱きしめ続けた。
大きなアンの身体は、ふにゃふにゃして暖かかった。
残念ながら短い僕の両手じゃ、全身を回しきれなかったけど。
アンの13才の誕生日には僕の瞳色の淡い紫ドレスを着てパーティーで踊ったのは良い思い出だ。
彼女とは僕が18才になった年に結婚した。
大人になるにつれアンの病状は安定し、薬を飲まなくなって一気に痩せた。
だが、子どもを産むたびに少しずつ少しずつ……
結局7人の子どもに恵まれた今、彼女の体形は12才の頃のそれだ。
だが浮腫みではない健康的なその顔は、ふくよかで優しく僕の好みだ。
僕はといえば、アンよりは身長は高くなったものの少年のような細身のままで、父上のようなガッシリした体形にはならなかった。
しかし髪は多少細くなったが、今も何とかキープできている。
専門家に聞くとハゲは、父方の遺伝によるらしい。
母上のアースキン伯爵の血は、気にしなくていいみたいでほっとした。
昨年、ローレンスが爵位を継いだと聞いたので、アンと二人でお祝いに行った。
ローレンスは見事なつるっパゲになっていて、会ったとたん大笑いしてやった。
結局、僕は中等学院・高等学院に通ったが、真実、友だちと言えるのはローレンスだけだった。
でも彼に会えたことは、僕の一生の財産となった。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
これにて今度こそ完結です( ´艸`)
最後までお読みいただきありがとうございました。
また僕はマズい事を言ったか?
「病気の事を黙っていてごめんなさい! 子どもが産めないと知られて婚約破棄されるのが嫌だったの! 悪口を言われても太ってるのは事実だったし、言い返せばおおごとになって、大人が権力で解決するのは惨めで嫌だった。そして反論せずにいたら王女が暴言を受けてるなんて恥ずかしい事をアーサーに知られずにすむと思って……そうしたらどんどん酷くなって収拾がつかなくなって……」
「いいじゃないか『ブクブク王女』だっけ? 言わせたいヤツに言わせておけばいい」
王太子妃殿下も言った奴のリストを控えていると仰ってたな。
うちもしっかり報復させて頂こう。
「僕だって学校じゃ『カマキリ少年』って呼ばれているんだぞ。友達なんて一人もいないし、話しかけて来るのはアンとローレンスしかしない」
「……本当に婚約者は私のままでいいの?」
「今はな。将来なんて分からないだろう? 僕たちはまだ子どもだ」
「……そうね」
「ただ僕は昨日までアンに腹が立っていた」
「え?」
「ローレンスの領地で、婚約者のシルフィーヌ嬢に会ったんだ。彼女はローレンスのために痩せてきれいに着飾って『ローレンスに綺麗に思われたい』と言っていた。君の病気を知らなかった僕は痩せようとも思わない、着飾りもしない君に腹が立っていたんだ」
「あ…ごめ…」
「謝るなよ! 別に僕は痩せた女性が好きじゃないし、あえて言えば容姿に好みはない。ただ婚約者に良く思われたいと、行動している彼女のいじらしさを羨ましく思って……その……悔しかったんだ。僕は君にそこまで思われていないんだと思って」
「ちが…」
「そして全てを知った今、君が僕のために勉強を頑張ってくれていた事を知って、嬉しく思っている」
熱が頬に上がるのが分かる。
殴られて変色しているから、分からないのが救いだ。
アンのぽっちゃりした両手を握り、上目使いで見つめる
とたんに彼女の顔が赤く染まる。
この顔が使えるまでとことん使ってやるぞ、ハゲるまで。
「アン。次の誕生日にドレスを贈るよ。君は本当はフリルがいっぱいついた、明るい色のドレスが好きだろう?」
病気になるまでいつも、フリルがいっぱいのドレスを着ていた。
「でも…より太ってみえるもの……」
「それはデザイナーの腕次第。それに中傷する女子がいても、僕が潰すから安心して。君は小さな頃みたいに、好きなドレスを好きなように着ていいんだ」
号泣するアンを僕は抱きしめ続けた。
大きなアンの身体は、ふにゃふにゃして暖かかった。
残念ながら短い僕の両手じゃ、全身を回しきれなかったけど。
アンの13才の誕生日には僕の瞳色の淡い紫ドレスを着てパーティーで踊ったのは良い思い出だ。
彼女とは僕が18才になった年に結婚した。
大人になるにつれアンの病状は安定し、薬を飲まなくなって一気に痩せた。
だが、子どもを産むたびに少しずつ少しずつ……
結局7人の子どもに恵まれた今、彼女の体形は12才の頃のそれだ。
だが浮腫みではない健康的なその顔は、ふくよかで優しく僕の好みだ。
僕はといえば、アンよりは身長は高くなったものの少年のような細身のままで、父上のようなガッシリした体形にはならなかった。
しかし髪は多少細くなったが、今も何とかキープできている。
専門家に聞くとハゲは、父方の遺伝によるらしい。
母上のアースキン伯爵の血は、気にしなくていいみたいでほっとした。
昨年、ローレンスが爵位を継いだと聞いたので、アンと二人でお祝いに行った。
ローレンスは見事なつるっパゲになっていて、会ったとたん大笑いしてやった。
結局、僕は中等学院・高等学院に通ったが、真実、友だちと言えるのはローレンスだけだった。
でも彼に会えたことは、僕の一生の財産となった。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
これにて今度こそ完結です( ´艸`)
最後までお読みいただきありがとうございました。