義弟の甘い罠は壊れるほど狂おしく【長編版】
***
律の部屋は、宝堂家の二階の一番奥にある。
スタイリッシュなインテリアに囲まれた空間の奥、壁際には大型のコルクボードが設置されていた。
「あーあ。ついに保科さんが動いたか……」
律はキャスター付きの回転椅子に座って気だるそうに呟きながら、手に持ったダーツの矢を軽く振る。コルクボードには数枚の写真がピンで留められている。その中の一枚──保科の顔写真めがけて、ダーツの矢を鋭く投げた。
グスッ、と音を立てて、矢が保科の眉間を正確に射抜く。
「あの人、昔から姉さんのこと好きだったよね。バレバレだったもん」
椅子をくるくる回しながら、軽く笑った。愉快というよりも、やや苛立ち混じりの笑みだった。
「どうやって姉さんを守ろうかな〜……」
呟く声は軽い調子を装っていたが、瞳の奥は不自然なほど冴えていた。指先でマウスをクリックすると、机の上の三台のモニターが一斉に明るくなる。
そこには、菜月の部屋がありとあらゆる角度から映されていた。
律の視線は、部屋の中でのんびりと過ごす菜月の姿を追う。ベッドに座って本を読む横顔に、一瞬だけ柔らかい表情を浮かべる。
画面の端で、菜月のバッグの持ち手が揺れた。
そこにぶら下がるストラップを見て、律はホッと息を吐く。
──ちゃんと、持ってる。
律はマウスから手を離し、机の端に置いていたスマートフォンへと視線を移した。
画面の地図上にある小さな赤い点が、ゆっくりと点滅している。
それを確かめると、何事もなかったように画面を伏せ唇の端をわずかに上げた。
だが、その笑みはすぐに消える。
画面の中の菜月が左手に光る指輪を触ると、律の目つきが鋭く変わった。
「……まだ、外してないんだ」
手元のマウスを指で叩く音が、部屋に小さく響く。
画面の中で笑う菜月は、〝義姉〟でありながら、律にとっては〝大切なもの〟でもあった。
「──誰にも触れさせないよ」
律の部屋は、宝堂家の二階の一番奥にある。
スタイリッシュなインテリアに囲まれた空間の奥、壁際には大型のコルクボードが設置されていた。
「あーあ。ついに保科さんが動いたか……」
律はキャスター付きの回転椅子に座って気だるそうに呟きながら、手に持ったダーツの矢を軽く振る。コルクボードには数枚の写真がピンで留められている。その中の一枚──保科の顔写真めがけて、ダーツの矢を鋭く投げた。
グスッ、と音を立てて、矢が保科の眉間を正確に射抜く。
「あの人、昔から姉さんのこと好きだったよね。バレバレだったもん」
椅子をくるくる回しながら、軽く笑った。愉快というよりも、やや苛立ち混じりの笑みだった。
「どうやって姉さんを守ろうかな〜……」
呟く声は軽い調子を装っていたが、瞳の奥は不自然なほど冴えていた。指先でマウスをクリックすると、机の上の三台のモニターが一斉に明るくなる。
そこには、菜月の部屋がありとあらゆる角度から映されていた。
律の視線は、部屋の中でのんびりと過ごす菜月の姿を追う。ベッドに座って本を読む横顔に、一瞬だけ柔らかい表情を浮かべる。
画面の端で、菜月のバッグの持ち手が揺れた。
そこにぶら下がるストラップを見て、律はホッと息を吐く。
──ちゃんと、持ってる。
律はマウスから手を離し、机の端に置いていたスマートフォンへと視線を移した。
画面の地図上にある小さな赤い点が、ゆっくりと点滅している。
それを確かめると、何事もなかったように画面を伏せ唇の端をわずかに上げた。
だが、その笑みはすぐに消える。
画面の中の菜月が左手に光る指輪を触ると、律の目つきが鋭く変わった。
「……まだ、外してないんだ」
手元のマウスを指で叩く音が、部屋に小さく響く。
画面の中で笑う菜月は、〝義姉〟でありながら、律にとっては〝大切なもの〟でもあった。
「──誰にも触れさせないよ」