義弟の甘い罠は壊れるほど狂おしく【長編版】
「ごめん……律……。私……あなたのことがわからない……!」

 ずっと一緒にいた義弟(おとうと)なのに。
 今はただ怖くて、触れられたくない。
 目の前の律が、なんだか遠い人に見えた。
 
「姉さん」

 律は寂しそうに微笑んで、近づいてくる。
 後ろは机で、逃げ場もない。身体をのけぞるけれど、律は私をぎゅっと抱きしめた。

「律……!」

 腕の中で声が震える。
 離れようとしても、腕ごと抱え込まれていて動けない。
 律は何も言わず、ただしばらく私を抱きしめたまま黙っていた。
 律の鼓動が伝わってくる。きっと、私の鼓動も──。
 
「俺は、姉さんが好きだけど」

 耳元で、律の声が落ちた。
 どくん、と心臓が大きく波打つ。

(好きだけど……なに? なにか言ってよ……)

 逃げられない。
 動けない。
 このまま、律になにかされる……?
 そう思った時だった。
 
「姉さんは──俺を好きにならないで」

 寂しそうな、泣きそうな声で。
 態度とまるで逆の言葉を、吐き出した。
 私は、まだなにひとつ理解できていない。
 律の心の奥底にある、狂気にも似た想いを──。
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