義弟の甘い罠は壊れるほど狂おしく【長編版】
「……まあ、おまえを引き取る前に、そんなことがあったわけだ」

 養父は息を吐きながら、ゆっくりとソファに背を預けた。
 長い話を終えたというより、長年抱えていた荷物を少しだけ降ろしたような感じに思えた。
 
「お父様は、すごいですね」
「ん?」
「律を引き取ったり、行き場のない私を引き取ってくれたり……。普通ではできないことです。本当に、感謝しています」
 
 自分で言いながら、少しだけ胸が熱くなる。
 養父は不器用に視線を逸らし、照れたように頬をかいた。
 
「や……いや、まあ……」
 
 その様子を見て、軽井沢さんがニヤニヤと笑う。
 ただ残念ながら、後継問題の話はまったく進まず、続きはまた後日ということになった。

 ——後継の話をしていたはずなのに。
 今日一日で、私は知りすぎてしまった気がした。
< 73 / 93 >

この作品をシェア

pagetop