運命の契約書

第10話 初めてのキス

○神崎グループビル 15階 国際事業部 朝

山田部長が美優たちインターン生を集めている。

山田部長:「皆さん、素晴らしいニュースがあります」

美優・田村・佐藤:「はい」

山田部長:「横井さんが担当した海外プロジェクトの資料が、取引先から絶賛されました」

田村と佐藤が拍手する。

田村:「すごいじゃない、横井さん!」

佐藤:「さすがだよ」

山田部長:「そこで、来週の最終プレゼンテーションに、横井さんにも参加していただきたいと思います」

美優:「え? 私がですか?」

山田部長:「はい。あなたの分析力が必要です」

美優、緊張と喜びで表情が輝く。


○神崎グループビル 38階 専務室 昼

美優が嬉しそうに蓮の部屋を訪れる。

美優:「蓮さん、報告があります!」

いつもより明るい声で入ってくる美優。蓮、その変化に微笑む。

蓮:「どうされましたか?」

美優:「来週のプレゼンテーションに参加させていただくことになりました」

蓮:「それは素晴らしい。おめでとうございます」

美優:「蓮さんのおかげです。機会をくださって、本当にありがとうございました」

蓮:「いえ、これはあなたの実力です」

美優、初めて素直に受け入れる。

美優:「はい。私も少し、自分を信じられるようになりました」

蓮、美優の成長を感じて嬉しそう。


○神崎グループビル 会議室 数日後

美優、蓮、山田部長らがプレゼンの準備をしている。

美優:「この部分のデータ分析はいかがでしょうか?」

蓮:「完璧です。相手方のニーズを的確に捉えていますね」

山田部長:「横井さん、本当に優秀ですね。将来が楽しみです」

美優、褒められて嬉しそう。

蓮:「美優さん、少し休憩しませんか?」

美優:「はい」

二人、会議室のテラスに出る。


○神崎グループビル 38階 テラス 夕方

東京の街が一望できるテラス。夕日が美しい。

蓮:「景色がきれいですね」

美優:「本当に。こんな高いところから東京を見るなんて、初めてです」

蓮:「美優さんも、ここから見る景色の一部になりましたね」

美優:「え?」

蓮:「この会社で、立派に働いている。もう外の世界の人ではない」

美優、その言葉に感動する。

美優:「蓮さん…」

蓮:「最初にお会いした時と、今の美優さんは全く違います」

美優:「どう違いますか?」

蓮:「自信を持って、堂々と自分の意見を言えるようになった」

美優、少し照れる。


夕風が吹き、美優の髪が舞う。蓮、その美しさに見とれる。

蓮:「美優さん」

美優:「はい」

蓮:「あなたと出会えて、本当に良かった」

美優、胸が高鳴る。

美優:「私も…蓮さんと出会えて」

二人の距離が自然に縮まる。

蓮:「美優さん、正直に言ってもいいですか?」

美優:「はい」

蓮:「私は…あなたのことを」

言いかけた時、強い風が吹く。美優、バランスを崩しそうになり、蓮が支える。

蓮:「大丈夫ですか?」

美優、蓮の腕の中で見つめ合う。


その時、田中秘書が慌てて現れる。

田中:「専務、横井さん! 大変です」

二人、慌てて離れる。

蓮:「どうされましたか?」

田中:「横井さん、素晴らしいニュースです。あなたが応募された経済論文コンクールで、最優秀賞を受賞されました!」

美優:「え? 本当ですか?」

田中:「はい! 全国の大学生の中からです」

美優、信じられない様子。

美優:「まさか…私が?」

蓮:「おめでとうございます! これは大変な快挙です」

蓮:「これはお祝いしなければいけませんね」

美優:「そんな、大げさな…」

蓮:「大げさではありません。全国最優秀賞ですよ」

田中:「私も嬉しいです。横井さんの実力が正式に認められたということですね」

蓮:「美優さん、今夜お時間はありますか?」

美優:「はい」

蓮:「お祝いをさせてください。今度は、きちんとしたレストランで」

美優、迷うが、今度は素直に。

美優:「ありがとうございます。お言葉に甘えさせていただきます」


○高級フレンチレストラン 夜

落ち着いた雰囲気の高級レストラン。美優、少しドレスアップしている。

蓮:「素敵です」

美優:「ありがとうございます。でも、こんなお店…緊張します」

蓮:「リラックスしてください。今夜は美優さんが主役です」

ウェイターがシャンパンを持ってくる。

蓮:「乾杯しましょう。あなたの輝かしい未来に」

美優:「乾杯」

グラスを合わせる二人。

蓮:「論文のテーマは何だったのですか?」

美優:「発展途上国の経済支援における民間企業の役割についてです」

蓮:「素晴らしいテーマですね」

美優:「実は、神崎グループでの経験がヒントになったんです」

蓮:「そうですか?」

美優:「はい。蓮さんや皆さんのお仕事を見ていて、民間企業が社会貢献できる可能性を実感したんです」

蓮:「それは嬉しい」

美優:「私の夢である国際機関での仕事も、民間企業との連携が重要だと思うようになりました」

蓮:「美優さんの視野の広さに、いつも感心させられます」

美優:「蓮さんのおかげです」

蓮:「いえ、あなた自身の力です」

お互いを見つめ合い、特別な空気が流れる。

○レストラン前 夜

食事を終えて外に出る二人。

蓮:「送らせてください」

美優:「ありがとうございます」

車でなく、歩いて駅に向かう二人。

美優:「今夜は本当にありがとうございました」

蓮:「こちらこそ、楽しい時間をありがとうございました」

美優:「蓮さんと一緒にいると、いつも特別な気持ちになります」

蓮:「特別な気持ち?」

美優:「なんだか…心が温かくて、幸せで」

蓮、立ち止まる。

蓮:「美優さん」

美優:「はい」

蓮:「私も同じ気持ちです」

○丸の内公園 夜

街灯の下、二人が向かい合って立っている。

蓮:「美優さん、もう隠すことはできません」

美優:「蓮さん…」

蓮:「私は、あなたを愛しています」

美優、驚いて目を見開く。

美優:「え…」

蓮:「最初は、ただの親切心だったかもしれません。でも、あなたを知れば知るほど、離れられなくなった」

美優:「蓮さん…」

蓮:「あなたの努力する姿、優しさ、強さ…すべてが愛しい」

美優、涙ぐむ。

美優:「でも…私たち」

蓮:「地位も年齢も関係ありません。私は一人の男性として、あなたを女性として愛しています」

美優:「私…」

蓮:「無理にとは言いません。でも、私の気持ちは本物です」

美優:「蓮さん…私も」

声が震える。

美優:「私も、蓮さんのことを…」

蓮:「美優さん」

美優:「愛しています」

蓮、美優に近づく。

蓮:「本当ですか?」

美優:「はい。ずっと、ずっと前から」

蓮:「美優さん…」

蓮、そっと美優の頬に手を当てる。

蓮:「キスしてもいいですか?」

美優、恥ずかしそうに、でも確かにうなずく。

美優:「はい…」

街灯の光の下、蓮がゆっくりと美優に唇を重ねる。

美優、目を閉じて蓮を受け入れる。

静かで、優しく、愛情に満ちたキス。

二人、離れてからも見つめ合う。

蓮:「愛してる」

美優:「私も…愛してます」

もう一度、今度は美優から唇を重ねる。


蓮:「これから、どうしましょうか?」

美優:「どうって…」

蓮:「周りにはまだ秘密にしますか?」

美優:「そうですね…もう少し、二人だけの時間を大切にしたいです」

蓮:「わかりました。美優さんのペースで」

美優:「ありがとうございます」

手を繋ぐ二人。

蓮:「でも、もう避けたりしないでくださいね」

美優:「はい。もう逃げません」

微笑み合う二人。


○丸の内駅 改札前

蓮:「気をつけてお帰りください」

美優:「はい。蓮さんも」

別れ際、蓮がそっと美優の手を握る。

蓮:「また明日」

美優:「また明日」

美優が改札を通った後、振り返る。蓮がまだ見送っている。

お互いに手を振る。

○美優のアパート 深夜

美優、鏡の前で自分の唇に触れている。

モノローグ(美優):「初めてのキス…夢みたい」

○神崎グループビル 蓮の専務室 同時刻

蓮、窓際で夜景を見ながら微笑んでいる。

モノローグ(蓮):「美優さん…やっと君と結ばれた」

ナレーション(美優):「私たちの恋が、ついに始まった。まだ誰にも言えない秘密だけれど、胸の奥で輝く宝石のように大切にしたい。この幸せを、ずっとずっと続けていけますように──」


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