運命の契約書

第28話 反撃開始

○美優の部屋 夜

美優が蓮との国際電話に出る。久しぶりに聞く蓮の声に胸が高鳴る。

蓮(電話越し):「美優さん…本当に久しぶりです」

美優:「蓮さん…お元気でしたか?」

蓮:「正直に言うと、とても寂しかったです」
 
美優:「私も…」

蓮:「なぜ何も言わずに帰国したのですか?」

美優、涙ぐみながら。

美優:「蓮さん、すべてお話しします。私、とんでもない間違いをしていました」

蓮:「間違い?」

美優:「私たちは騙されていたんです」

美優、これまでの真実をすべて話す。リナの正体、宮下麻里子の策略、すべての嫌がらせが計画的だったこと。

蓮:「そんな…まさか麻里子が」

美優:「信じられないかもしれませんが、証拠があります」

蓮:「美優さん、辛い思いをさせてしまって…」

美優:「蓮さんのせいじゃありません。私が愚かだったんです」

蓮:「いいえ、私が美優さんを守れなかった」

美優:「蓮さん…まだ私を愛していますか?」

蓮:「愛しています。ずっと愛していました」

美優、安堵の涙を流す。

美優:「私も愛しています。ずっと」


○神崎グループビル 38階 会議室 翌日

美優、田中秘書、そして会社の法務担当者が集まっている。

田中:「美優さんが集めた証拠を整理しましょう」

美優:「リナの正体、宮下グループとの関係、そして一連の嫌がらせの証拠です」

法務担当者:「これは…計画的な業務妨害、名誉毀損、場合によっては刑事事件になる可能性があります」

田中:「宮下麻里子さんに対してどのような対応を取りますか?」

美優:「直接対決します」

法務担当者:「危険ではありませんか?」

美優:「もう逃げません。蓮さんのためにも、自分のためにも」

田中:「では、私たちがバックアップいたします」

美優:「ありがとうございます」



○高級ホテル ラウンジ 夕方

美優が宮下麻里子に連絡を取り、会うことになった。麻里子は余裕の表情で現れる。

宮下麻里子:「まあ、横井さん。お久しぶりですね」

美優:「宮下さん、お時間をいただきありがとうございます」

宮下麻里子:「海外から帰国されたそうですね。お疲れさまでした」

美優:「はい。とても『勉強』になりました」

美優の口調に含みがあることに麻里子も気づく。

宮下麻里子:「それは良かったですわ。で、何のお話でしょうか?」

美優:「リナ・タナワットさんについて」

麻里子の表情が一瞬変わる。

宮下麻里子:「どちら様でしょう? 存じませんが」

美優:「宮下グループの現地法人でコンサルタントをされている方です」

麻里子、動揺を隠そうとする。

宮下麻里子:「あら、当社の社員でしたか。何か問題が?」

美優:「とても『親切』にしていただきました」


美優、タブレットを取り出す。

美優:「これをご覧ください」

画面にはリナの社員証明書、そして美優を監視している写真が表示される。

宮下麻里子:「これは…」

美優:「あなたが私を監視し、嫌がらせを指示した証拠です」

宮下麻里子:「証拠? 何かの間違いでしょう」

美優:「間違いではありません。すべて録音もされています」

美優、音声データも再生する。リナと麻里子の電話の録音。

録音:『彼女は完全に彼を疑っています』『素晴らしい。この調子で続けて』

麻里子、青ざめる。

宮下麻里子:「これは…どこで手に入れたのですか?」

美優:「それは秘密です。大切なのは、あなたの犯行が証明されたということです」



宮下麻里子:「仮にそうだとして、何か問題でも?」

美優:「問題? 犯罪です」

宮下麻里子:「犯罪だなんて大げさな。私はただ、蓮さんに相応しくない女性を遠ざけただけです」

美優:「相応しくない?」

宮下麻里子:「そうです。あなたのような身分の低い女性では、蓮さんの足手まといになるだけ」

美優、怒りを抑えながら。

美優:「身分で人を判断するんですね」

宮下麻里子:「当然です。私たちは同じ世界で育った。あなたとは格が違います」

美優:「でも、蓮さんが選んだのは私です」

宮下麻里子:「それは一時的な迷いです」

美優:「迷い?」

宮下麻里子:「男性は時々、身分違いの恋に憧れるものです。でも最終的には、相応しい相手を選ぶものよ」


美優:「あなたは大きな勘違いをしています」

宮下麻里子:「勘違い?」

美優:「蓮さんがあなたを愛していないことです」

宮下麻里子:「何ですって?」

美優:「過去の記事を読みました。蓮さんは結婚する気がなかったと書いてありました」

宮下麻里子:「それは…」

美優:「一方的に結婚を期待していたのは、あなただけだったのです」

麻里子、動揺する。

美優:「蓮さんは、あなたが留学している間に本当の愛を見つけた。それが私です」

宮下麻里子:「黙りなさい!」

美優:「真実を受け入れてください。蓮さんはあなたを選びませんでした」

宮下麻里子:「まだ終わっていません」

美優:「終わっています。もう二度と私たちの邪魔をしないでください」



美優、法務書類を取り出す。

美優:「これは告発状です」

宮下麻里子:「告発状?」

美優:「業務妨害、名誉毀損、ストーカー行為。すべての証拠が揃っています」

宮下麻里子:「脅すつもりですか?」

美優:「脅しではありません。事実です」

美優:「もしもう二度と私たちに近づかないと約束してくれるなら、この告発状は破棄します」

宮下麻里子:「条件ですか?」

美優:「最後のチャンスです。素直に諦めてください」

麻里子、悔しそうな表情。

宮下麻里子:「…わかりました」

美優:「本当ですか?」

宮下麻里子:「もう諦めます。二度と邪魔はしません」

しかし、その目には諦めていない光が残っている。



○丸の内大学 学生ラウンジ 夜

美優が竹内由香に対決の結果を報告している。

竹内由香:「すごいじゃない! ついに言い返したのね」

美優:「でも、本当に諦めてくれるかわからない」

竹内由香:「きっと大丈夫よ。証拠もあるし」

美優:「でも、あの人の目を見てると…まだ何かしそうな気がして」

竹内由香:「今度は負けないでしょ」

美優:「そうね。もう騙されない」

竹内由香:「で、蓮さんとはどうするの?」

美優:「近いうちに日本に帰ってくるそうです」

竹内由香:「やったー! ついに再会ね」

美優:「今度こそ、幸せになる」



○現地事務所 夜

蓮がプイに帰国の意志を告げている。

蓮(日本語で):「プロジェクトの引き継ぎをお願いします」

プイ:「もう帰国されるのですか?」

蓮:「はい。日本で待っている人がいます」

プイ:「婚約者の方ですね」

蓮:「はい。今度こそ、彼女を幸せにします」

プイ、複雑な表情。

プイ:「お幸せに」

蓮:「ありがとうございます、プイさん。あなたのおかげで、辛い時期を乗り越えられました」

プイ:「お役に立てて良かったです」

蓮:「必ず幸せになります」



○恵子のアパート 夜

美優が家族に報告している。

恵子:「よく頑張ったわね、美優」

美優:「お母さん、蓮さんが帰ってきます」

健人:「やったー! また蓮さんに会える」

恵子:「今度こそ、邪魔されることなく幸せになりなさい」

美優:「はい。今度は誰にも負けません」

健人:「姉ちゃんが強くなった」

美優:「強くなったかな?」

恵子:「とても強くなったわ。真実を見つけて、戦って、勝ち取ったのよ」

美優:「まだ終わってないかもしれません」

恵子:「でも、もうあなたは一人じゃないでしょう?」

美優:「そうですね。蓮さんと一緒なら、何でも乗り越えられます」


○麻里子のマンション 深夜

麻里子が一人でワインを飲みながら、次の手を考えている。

宮下麻里子:「諦めるなんて言ったけれど…」

携帯で誰かに電話をかける。

宮下麻里子(電話で):「私よ。まだ諦めていません」

相手(電話越し):「でも、証拠を握られているのでしょう?」

宮下麻里子:「だからこそ、今度は確実に仕留めなければ」

相手:「どうするおつもりですか?」

宮下麻里子:「蓮さんが帰国した時が最後のチャンス」

相手:「危険すぎませんか?」

宮下麻里子:「危険を冒してでも、あの女から蓮さんを奪い返します」

邪悪な笑みを浮かべる麻里子。



○現地空港 朝

蓮が日本に向けて出発する。プイと現地スタッフが見送りに来ている。

プイ(日本語で):「お気をつけて」

蓮:「ありがとうございました。皆さんのおかげです」

現地スタッフA:「また会える日を楽しみにしています」

蓮:「私も」

搭乗前、蓮が美優にメッセージを送る。

メッセージ:「今から帰国します。空港で待っていてください。愛しています」



○美優の部屋 昼

美優が蓮を迎える準備をしている。久しぶりにおしゃれをして、鏡の前で身支度を整える。

美優:「緊張する…」

竹内由香が手伝いに来ている。

竹内由香:「美優、すごくきれいよ」

美優:「本当?」

竹内由香:「絶対に蓮さん、見とれるわよ」

美優:「久しぶりすぎて、何を話していいかわからない」

竹内由香:「大丈夫。愛し合ってるんだから」

美優、決意を新たにする。

美優:「今度こそ、幸せになる」



○羽田空港 到着ロビー 夕方

美優が蓮の到着を待っている。健人も一緒に来ている。

健人:「姉ちゃん、緊張してる?」

美優:「すごく緊張してる」

健人:「大丈夫だよ。蓮さんも同じ気持ちだから」

美優:「そうかな」

到着アナウンスが流れる。

アナウンス:「東南アジア便が到着いたしました」

美優の心臓が高鳴る。

美優:「ついに…」



到着ゲートから乗客が出てくる。美優、蓮の姿を探す。

そして、ついに蓮が現れる。二人、目が合った瞬間に時が止まったような感覚。

蓮:「美優さん…」

美優:「蓮さん…」

二人、ゆっくりと近づいていく。周りの音が消えたような静寂の中。

蓮:「会いたかった」

美優:「私も…」

二人、抱き合う。長い別れの後の、感動的な再会。

蓮:「もう離さない」

美優:「私も離れません」

健人、感動して涙ぐんでいる。

健人:「良かった…本当に良かった」

しかし、遠くから二人を監視している影がある。麻里子の手先が空港にいた。

手下(携帯で):「二人が会いました」

宮下麻里子(電話越し):「わかりました。計画を実行します」

ナレーション(美優):「ついに蓮さんと再会できた。長い苦難の末に掴んだ幸せ。でも、まだ見えない敵が最後の罠を仕掛けようとしていることを、私たちはまだ知らなかった──」


< 28 / 30 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop