運命の契約書
第29話 最後の罠
○高級レストラン 夜
蓮と美優が再会を祝して食事をしている。二人とも幸せそうな表情。
蓮:「こうして一緒にいると、夢のようです」
美優:「私も。長い悪夢がやっと終わったみたい」
蓮:「美優さん、本当にごめんなさい。僕が気づいてあげられなくて」
美優:「蓮さんのせいじゃありません。私たちは被害者だったのよ」
蓮:「でも、あなたを一人で戦わせてしまった」
美優:「でも、その結果私は強くなれました」
蓮、美優の手を握る。
蓮:「今度こそ、絶対に幸せにします」
美優:「私も蓮さんを幸せにします」
蓮:「もう何も私たちを引き離すことはできません」
二人、見つめ合って微笑む。しかし、レストランの外では麻里子の手下が監視している。
○麻里子のマンション 深夜
麻里子が複数の手下と最後の作戦会議をしている。
宮下麻里子:「明日が最後のチャンスです」
手下A:「どのような計画ですか?」
宮下麻里子:「彼らが一番幸せな瞬間を、地獄に変えてやります」
手下B:「具体的には?」
宮下麻里子:「神崎蓮を完全に社会的に失墜させます」
麻里子、テーブルに書類を広げる。
宮下麻里子:「これは偽造した契約書です。海外で不正取引をしていたという証拠」
手下A:「偽造ですか?」
宮下麻里子:「でも、とても精巧に作られています。これを週刊誌に流せば…」
手下B:「神崎専務は失脚しますね」
宮下麻里子:「そして、横井美優も彼を見捨てるでしょう。逆境になった時の愛なんて、所詮その程度のものです」
邪悪な笑みを浮かべる麻里子。
宮下麻里子:「明日の夜、決行します」
○神崎グループビル 38階 専務室 朝
蓮が久しぶりに日本のオフィスに戻ってきた。田中秘書が出迎える。
田中:「専務、お帰りなさい」
蓮:「田中さん、お疲れさまでした」
田中:「海外でのプロジェクト、大成功だったそうですね」
蓮:「おかげさまで。でも、それより美優さんのことで感謝しています」
田中:「私は何も…美優さんが真実を見つけられたんです」
蓮:「田中さんがきっかけを作ってくれました」
机の上に美優の写真を置く蓮。
蓮:「今度こそ、彼女を幸せにします」
田中:「素晴らしいことです」
蓮:「近いうちに、正式にプロポーズしようと思います」
田中:「本当ですか? おめでとうございます」
○丸の内大学 昼
美優が授業を受けている。表情が明るく、集中して勉強している。
教授:「横井さん、海外での経験を踏まえた興味深い分析ですね」
美優:「ありがとうございます」
授業後、竹内由香が話しかける。
竹内由香:「美優、すごく輝いてるわね」
美優:「そうかな?」
竹内由香:「蓮さんと復縁してから、別人みたい」
美優:「幸せなの。やっと本当の幸せを掴めた気がする」
竹内由香:「良かったわ。でも、あの女は大丈夫?」
美優:「宮下さん? もう諦めたと思う」
竹内由香:「本当に?」
美優:「証拠もあるし、法的措置も辞さないって伝えたから」
竹内由香:「そうならいいけど…」
由香の表情に不安が残る。
○週刊誌編集部 昼
記者が編集長に報告している。
記者:「編集長、神崎グループの専務に関するスクープが入りました」
編集長:「どんな内容だ?」
記者:「海外での不正取引の疑いです」
編集長、書類を見る。
編集長:「これは…本物か?」
記者:「情報提供者は匿名ですが、書類は本物に見えます」
編集長:「よし、明日の朝刊に載せよう」
記者:「神崎グループにコメントを求めますか?」
編集長:「事前に知らせる必要はない。スクープ性が薄れる」
麻里子の計画通りに事が進んでいる。
○蓮のアパート 夜
蓮と美優が一緒に料理をしている。久しぶりの幸せな時間。
美優:「久しぶりに二人で料理するのね」
蓮:「海外でずっと夢見ていた光景です」
美優:「私も。毎日こうしていられたらいいのに」
蓮:「美優さん」
美優:「はい」
蓮:「実は、お話ししたいことがあります」
美優:「何ですか?」
蓮:「近いうちに、正式にプロポーズをしたいんです」
美優、驚いて振り返る。
美優:「プロポーズ?」
蓮:「はい。今度こそ、誰にも邪魔されない形で」
美優:「蓮さん…」
蓮:「まだ準備中ですが、心の準備をしておいてください」
美優、涙ぐみながら微笑む。
美優:「はい。楽しみにしています」
二人、抱き合う。この時はまだ、翌日の悲劇を知らない。
○美優のアパート 深夜
美優が日記を書いている。
美優(ナレーション):「今日は本当に幸せだった。蓮さんがプロポーズを考えてくれている。夢のような話」
○蓮のアパート 同時刻
蓮が婚約指輪のカタログを見ている。
蓮:「美優さんに似合う指輪はどれだろう」
幸せそうに指輪を選んでいる。
○麻里子のマンション 同時刻
麻里子が最終チェックをしている。
宮下麻里子:「明日の朝、すべてが変わる」
ワインを飲みながら満足そうな表情。
宮下麻里子:「蓮さん、あなたは私のものになるのよ」
○神崎グループビル 38階 朝
田中秘書が慌てて蓮の部屋に駆け込んでくる。
田中:「専務! 大変です!」
蓮:「どうしたんですか?」
田中:「週刊誌に専務の記事が…」
週刊誌を見せる田中。一面に「神崎グループ専務、海外で不正取引か」の見出し。
蓮:「これは…何ですか?」
記事を読む蓮。顔色が変わる。
蓮:「こんなことはしていません」
田中:「偽造ですね」
蓮:「間違いありません。でも、これだけ精巧だと…」
田中:「宮下麻里子の仕業でしょうか」
蓮:「可能性が高いです」
電話が鳴り始める。報道関係者からの問い合わせ。
田中:「どう対応しますか?」
蓮:「まず美優さんに連絡します」
○美優の大学 昼
美優が授業を受けていると、クラスメートがざわめき始める。
クラスメートA:「ねえ、これ見て」
スマホで週刊誌の記事を見せられる美優。
美優:「これは…」
クラスメートB:「横井さんの彼氏でしょ?」
美優:「違います。これは嘘です」
クラスメートA:「でも、証拠もあるって書いてあるよ」
美優、動揺する。周りの視線が痛い。
教授:「横井さん、大丈夫ですか?」
美優:「すみません。少し体調が…」
教室を出る美優。廊下で蓮からの電話を受ける。
蓮(電話越し):「美優さん、記事を見ましたか?」
美優:「見ました。これは嘘ですよね?」
蓮:「もちろんです。偽造された書類です」
美優:「やっぱり宮下さんの…」
蓮:「間違いありません」
○神崎グループビル 1階 昼
蓮がビルに入ると、社員たちがひそひそと話している。
社員A:「専務、本当に不正をしてたのかしら」
社員B:「書類もあるし、本当かもしれない」
蓮、その会話を聞いて辛そうな表情。
○丸の内大学 同時刻
美優も同様に、同級生たちから好奇の目で見られている。
学生A:「あの人の彼氏、犯罪者なんでしょ?」
学生B:「可哀想に。騙されてたのかな」
美優、周囲の視線に耐えられず早退する。
○恵子のアパート 夕方
美優が落ち込んで帰宅すると、健人と恵子が心配している。
恵子:「美優、大丈夫?」
美優:「お母さん、記事見ました?」
健人:「見たよ。でも嘘でしょ?」
美優:「もちろん嘘よ。でも、みんな信じてしまう」
恵子:「蓮さんは?」
美優:「辛そうでした。会社でも大変だと思う」
健人:「また宮下って女の仕業?」
美優:「きっとそう。でも今度は証拠を残さないように用心深くやってる」
恵子:「美優、あなたはどうするの?」
美優:「どうするって?」
恵子:「蓮さんを支えるの? それとも距離を置くの?」
美優、迷いを見せる。
美優:「わからない…」
○高級カフェ 夕方
美優が一人でいるところに、宮下麻里子が現れる。
宮下麻里子:「横井さん、偶然ですね」
美優:「あなたの仕業でしょう」
宮下麻里子:「何のことかしら?」
美優:「週刊誌の記事です」
宮下麻里子:「あら、ご覧になりました? 大変なことになりましたね」
美優:「偽造でしょう」
宮下麻里子:「証拠はおありですか?」
美優、答えられない。
宮下麻里子:「もしかすると、本当かもしれませんよ」
美優:「蓮さんはそんな人じゃありません」
宮下麻里子:「でも、男性は女性が思うほど完璧ではありませんから」
美優:「やめてください」
宮下麻里子:「横井さん、まだ間に合います」
美優:「何がですか?」
宮下麻里子:「彼から離れることです。このまま一緒にいても、あなたも巻き添えを食うだけです」
宮下麻里子:「社会的に失墜した男性と一緒にいて、幸せになれると思いますか?」
美優:「蓮さんは無実です」
宮下麻里子:「でも世間は信じません。疑惑は一度付くと消えません」
美優、その言葉に動揺する。
宮下麻里子:「あなたの家族はどうでしょう? お母様の手術費を出してもらった恩もありますし、離れにくいでしょうけれど」
美優:「それは…」
宮下麻里子:「でも、このままでは共倒れですよ」
美優:「私は蓮さんを信じています」
宮下麻里子:「信じるだけで生活できますか?」
美優、言葉に詰まる。
宮下麻里子:「よく考えてみてください。本当に彼と一緒にいることが、あなたにとって幸せなのかを」
麻里子、立ち去る。美優、一人残されて混乱している。
○神崎グループビル 重役会議室 夜
蓮が重役たちに呼び出されている。
山田会長:「蓮君、この記事の件だが…」
蓮:「すべて偽造です」
重役A:「しかし、書類は精巧に作られている」
重役B:「会社のイメージに関わる問題だ」
山田会長:「調査が終わるまで、職務停止にせざるを得ない」
蓮:「職務停止?」
山田会長:「一時的な措置だ。潔白が証明されれば復帰できる」
蓮:「わかりました」
会議室を出る蓮。田中秘書が待っている。
田中:「専務…」
蓮:「田中さん、しばらくお疲れさまでした」
田中:「こんなことで負けないでください」
蓮:「ありがとうございます」
田中:「美優さんは?」
蓮:「彼女にも迷惑をかけてしまいました」
田中:「きっと専務のことを信じていますよ」
蓮:「そうでしょうか…」
○美優のアパート 深夜
美優が一人で悩んでいる。携帯には蓮からの着信履歴が複数ある。
モノローグ(美優):「蓮さんは無実。でも、このままでは私たちの未来は…」
麻里子の言葉が頭から離れない。
モノローグ(美優):「共倒れになるのか…」
ついに蓮からの電話に出る。
蓮(電話越し):「美優さん、なぜ電話に出てくれないんですか?」
美優:「ごめんなさい…混乱していて」
蓮:「僕を信じてくれませんか?」
美優:「信じてます。でも…」
蓮:「でも?」
美優:「怖いんです」
蓮:「何がですか?」
美優:「このままでは、私たちの未来が…」
蓮:「美優さん、僕たちは試練を乗り越えてきました。今回も大丈夫です」
美優:「でも、今度は違います」
蓮:「何も違いません」
美優:「違います! 今度は証拠があるんです」
蓮:「偽造された証拠です」
美優:「でも証明できません」
蓮:「美優さん…まさか僕を疑っているんですか?」
美優、答えられない。
蓮:「美優さん?」
美優:「ごめんなさい…少し考えさせてください」
電話を切る美優。蓮、呆然とする。
ナレーション(美優):「麻里子の最後の罠は、最も巧妙だった。偽造された証拠によって蓮さんは社会的に失墜し、私たちは再び引き裂かれそうになっている。今度こそ、愛だけでは乗り越えられないのかもしれない──」
蓮と美優が再会を祝して食事をしている。二人とも幸せそうな表情。
蓮:「こうして一緒にいると、夢のようです」
美優:「私も。長い悪夢がやっと終わったみたい」
蓮:「美優さん、本当にごめんなさい。僕が気づいてあげられなくて」
美優:「蓮さんのせいじゃありません。私たちは被害者だったのよ」
蓮:「でも、あなたを一人で戦わせてしまった」
美優:「でも、その結果私は強くなれました」
蓮、美優の手を握る。
蓮:「今度こそ、絶対に幸せにします」
美優:「私も蓮さんを幸せにします」
蓮:「もう何も私たちを引き離すことはできません」
二人、見つめ合って微笑む。しかし、レストランの外では麻里子の手下が監視している。
○麻里子のマンション 深夜
麻里子が複数の手下と最後の作戦会議をしている。
宮下麻里子:「明日が最後のチャンスです」
手下A:「どのような計画ですか?」
宮下麻里子:「彼らが一番幸せな瞬間を、地獄に変えてやります」
手下B:「具体的には?」
宮下麻里子:「神崎蓮を完全に社会的に失墜させます」
麻里子、テーブルに書類を広げる。
宮下麻里子:「これは偽造した契約書です。海外で不正取引をしていたという証拠」
手下A:「偽造ですか?」
宮下麻里子:「でも、とても精巧に作られています。これを週刊誌に流せば…」
手下B:「神崎専務は失脚しますね」
宮下麻里子:「そして、横井美優も彼を見捨てるでしょう。逆境になった時の愛なんて、所詮その程度のものです」
邪悪な笑みを浮かべる麻里子。
宮下麻里子:「明日の夜、決行します」
○神崎グループビル 38階 専務室 朝
蓮が久しぶりに日本のオフィスに戻ってきた。田中秘書が出迎える。
田中:「専務、お帰りなさい」
蓮:「田中さん、お疲れさまでした」
田中:「海外でのプロジェクト、大成功だったそうですね」
蓮:「おかげさまで。でも、それより美優さんのことで感謝しています」
田中:「私は何も…美優さんが真実を見つけられたんです」
蓮:「田中さんがきっかけを作ってくれました」
机の上に美優の写真を置く蓮。
蓮:「今度こそ、彼女を幸せにします」
田中:「素晴らしいことです」
蓮:「近いうちに、正式にプロポーズしようと思います」
田中:「本当ですか? おめでとうございます」
○丸の内大学 昼
美優が授業を受けている。表情が明るく、集中して勉強している。
教授:「横井さん、海外での経験を踏まえた興味深い分析ですね」
美優:「ありがとうございます」
授業後、竹内由香が話しかける。
竹内由香:「美優、すごく輝いてるわね」
美優:「そうかな?」
竹内由香:「蓮さんと復縁してから、別人みたい」
美優:「幸せなの。やっと本当の幸せを掴めた気がする」
竹内由香:「良かったわ。でも、あの女は大丈夫?」
美優:「宮下さん? もう諦めたと思う」
竹内由香:「本当に?」
美優:「証拠もあるし、法的措置も辞さないって伝えたから」
竹内由香:「そうならいいけど…」
由香の表情に不安が残る。
○週刊誌編集部 昼
記者が編集長に報告している。
記者:「編集長、神崎グループの専務に関するスクープが入りました」
編集長:「どんな内容だ?」
記者:「海外での不正取引の疑いです」
編集長、書類を見る。
編集長:「これは…本物か?」
記者:「情報提供者は匿名ですが、書類は本物に見えます」
編集長:「よし、明日の朝刊に載せよう」
記者:「神崎グループにコメントを求めますか?」
編集長:「事前に知らせる必要はない。スクープ性が薄れる」
麻里子の計画通りに事が進んでいる。
○蓮のアパート 夜
蓮と美優が一緒に料理をしている。久しぶりの幸せな時間。
美優:「久しぶりに二人で料理するのね」
蓮:「海外でずっと夢見ていた光景です」
美優:「私も。毎日こうしていられたらいいのに」
蓮:「美優さん」
美優:「はい」
蓮:「実は、お話ししたいことがあります」
美優:「何ですか?」
蓮:「近いうちに、正式にプロポーズをしたいんです」
美優、驚いて振り返る。
美優:「プロポーズ?」
蓮:「はい。今度こそ、誰にも邪魔されない形で」
美優:「蓮さん…」
蓮:「まだ準備中ですが、心の準備をしておいてください」
美優、涙ぐみながら微笑む。
美優:「はい。楽しみにしています」
二人、抱き合う。この時はまだ、翌日の悲劇を知らない。
○美優のアパート 深夜
美優が日記を書いている。
美優(ナレーション):「今日は本当に幸せだった。蓮さんがプロポーズを考えてくれている。夢のような話」
○蓮のアパート 同時刻
蓮が婚約指輪のカタログを見ている。
蓮:「美優さんに似合う指輪はどれだろう」
幸せそうに指輪を選んでいる。
○麻里子のマンション 同時刻
麻里子が最終チェックをしている。
宮下麻里子:「明日の朝、すべてが変わる」
ワインを飲みながら満足そうな表情。
宮下麻里子:「蓮さん、あなたは私のものになるのよ」
○神崎グループビル 38階 朝
田中秘書が慌てて蓮の部屋に駆け込んでくる。
田中:「専務! 大変です!」
蓮:「どうしたんですか?」
田中:「週刊誌に専務の記事が…」
週刊誌を見せる田中。一面に「神崎グループ専務、海外で不正取引か」の見出し。
蓮:「これは…何ですか?」
記事を読む蓮。顔色が変わる。
蓮:「こんなことはしていません」
田中:「偽造ですね」
蓮:「間違いありません。でも、これだけ精巧だと…」
田中:「宮下麻里子の仕業でしょうか」
蓮:「可能性が高いです」
電話が鳴り始める。報道関係者からの問い合わせ。
田中:「どう対応しますか?」
蓮:「まず美優さんに連絡します」
○美優の大学 昼
美優が授業を受けていると、クラスメートがざわめき始める。
クラスメートA:「ねえ、これ見て」
スマホで週刊誌の記事を見せられる美優。
美優:「これは…」
クラスメートB:「横井さんの彼氏でしょ?」
美優:「違います。これは嘘です」
クラスメートA:「でも、証拠もあるって書いてあるよ」
美優、動揺する。周りの視線が痛い。
教授:「横井さん、大丈夫ですか?」
美優:「すみません。少し体調が…」
教室を出る美優。廊下で蓮からの電話を受ける。
蓮(電話越し):「美優さん、記事を見ましたか?」
美優:「見ました。これは嘘ですよね?」
蓮:「もちろんです。偽造された書類です」
美優:「やっぱり宮下さんの…」
蓮:「間違いありません」
○神崎グループビル 1階 昼
蓮がビルに入ると、社員たちがひそひそと話している。
社員A:「専務、本当に不正をしてたのかしら」
社員B:「書類もあるし、本当かもしれない」
蓮、その会話を聞いて辛そうな表情。
○丸の内大学 同時刻
美優も同様に、同級生たちから好奇の目で見られている。
学生A:「あの人の彼氏、犯罪者なんでしょ?」
学生B:「可哀想に。騙されてたのかな」
美優、周囲の視線に耐えられず早退する。
○恵子のアパート 夕方
美優が落ち込んで帰宅すると、健人と恵子が心配している。
恵子:「美優、大丈夫?」
美優:「お母さん、記事見ました?」
健人:「見たよ。でも嘘でしょ?」
美優:「もちろん嘘よ。でも、みんな信じてしまう」
恵子:「蓮さんは?」
美優:「辛そうでした。会社でも大変だと思う」
健人:「また宮下って女の仕業?」
美優:「きっとそう。でも今度は証拠を残さないように用心深くやってる」
恵子:「美優、あなたはどうするの?」
美優:「どうするって?」
恵子:「蓮さんを支えるの? それとも距離を置くの?」
美優、迷いを見せる。
美優:「わからない…」
○高級カフェ 夕方
美優が一人でいるところに、宮下麻里子が現れる。
宮下麻里子:「横井さん、偶然ですね」
美優:「あなたの仕業でしょう」
宮下麻里子:「何のことかしら?」
美優:「週刊誌の記事です」
宮下麻里子:「あら、ご覧になりました? 大変なことになりましたね」
美優:「偽造でしょう」
宮下麻里子:「証拠はおありですか?」
美優、答えられない。
宮下麻里子:「もしかすると、本当かもしれませんよ」
美優:「蓮さんはそんな人じゃありません」
宮下麻里子:「でも、男性は女性が思うほど完璧ではありませんから」
美優:「やめてください」
宮下麻里子:「横井さん、まだ間に合います」
美優:「何がですか?」
宮下麻里子:「彼から離れることです。このまま一緒にいても、あなたも巻き添えを食うだけです」
宮下麻里子:「社会的に失墜した男性と一緒にいて、幸せになれると思いますか?」
美優:「蓮さんは無実です」
宮下麻里子:「でも世間は信じません。疑惑は一度付くと消えません」
美優、その言葉に動揺する。
宮下麻里子:「あなたの家族はどうでしょう? お母様の手術費を出してもらった恩もありますし、離れにくいでしょうけれど」
美優:「それは…」
宮下麻里子:「でも、このままでは共倒れですよ」
美優:「私は蓮さんを信じています」
宮下麻里子:「信じるだけで生活できますか?」
美優、言葉に詰まる。
宮下麻里子:「よく考えてみてください。本当に彼と一緒にいることが、あなたにとって幸せなのかを」
麻里子、立ち去る。美優、一人残されて混乱している。
○神崎グループビル 重役会議室 夜
蓮が重役たちに呼び出されている。
山田会長:「蓮君、この記事の件だが…」
蓮:「すべて偽造です」
重役A:「しかし、書類は精巧に作られている」
重役B:「会社のイメージに関わる問題だ」
山田会長:「調査が終わるまで、職務停止にせざるを得ない」
蓮:「職務停止?」
山田会長:「一時的な措置だ。潔白が証明されれば復帰できる」
蓮:「わかりました」
会議室を出る蓮。田中秘書が待っている。
田中:「専務…」
蓮:「田中さん、しばらくお疲れさまでした」
田中:「こんなことで負けないでください」
蓮:「ありがとうございます」
田中:「美優さんは?」
蓮:「彼女にも迷惑をかけてしまいました」
田中:「きっと専務のことを信じていますよ」
蓮:「そうでしょうか…」
○美優のアパート 深夜
美優が一人で悩んでいる。携帯には蓮からの着信履歴が複数ある。
モノローグ(美優):「蓮さんは無実。でも、このままでは私たちの未来は…」
麻里子の言葉が頭から離れない。
モノローグ(美優):「共倒れになるのか…」
ついに蓮からの電話に出る。
蓮(電話越し):「美優さん、なぜ電話に出てくれないんですか?」
美優:「ごめんなさい…混乱していて」
蓮:「僕を信じてくれませんか?」
美優:「信じてます。でも…」
蓮:「でも?」
美優:「怖いんです」
蓮:「何がですか?」
美優:「このままでは、私たちの未来が…」
蓮:「美優さん、僕たちは試練を乗り越えてきました。今回も大丈夫です」
美優:「でも、今度は違います」
蓮:「何も違いません」
美優:「違います! 今度は証拠があるんです」
蓮:「偽造された証拠です」
美優:「でも証明できません」
蓮:「美優さん…まさか僕を疑っているんですか?」
美優、答えられない。
蓮:「美優さん?」
美優:「ごめんなさい…少し考えさせてください」
電話を切る美優。蓮、呆然とする。
ナレーション(美優):「麻里子の最後の罠は、最も巧妙だった。偽造された証拠によって蓮さんは社会的に失墜し、私たちは再び引き裂かれそうになっている。今度こそ、愛だけでは乗り越えられないのかもしれない──」