再会した初恋の幼馴染との距離が近すぎて困ってます! ~離れて初めて気付く恋~

 会社に出勤してすぐにもかかわらず、もうすでにどっと疲れを感じてしまっている。おかしいな、しっかり寝たはずなのに。いや、あの煩いのが勝手に泊まっていったからか。

 色々と心臓が飛び出しそうで大変だった。あの野郎、やってくれたな。

 けれど、昨日は夕飯の片づけをやってくれてたみたいだからそこは感謝する。

 昨日の事は、途中までは鮮明に覚えている。

 触れられた耳たぶの熱さも、昨日言われた朝陽らしからぬ発言も。

 朝陽は変わった。声も笑い方も変わらないけれど、私の知らないところがいくつもあった。あんなに一緒にいた私の、知らない部分が。

 たった6年離れていただけなのに。

 私としては、あの居酒屋で会った時点では確かに離れていた時間が長く感じていた。けれど……自分が思っていたよりもっと長かったんだと実感している。こんなに朝陽が変わっていたんだから。

 朝陽と離れた6年間。会いたい、とは思わないようにしていた。けれど本当は、心の奥底では……思っていたかもしれない。東京に就職したのがその証拠だ。都会デビューしたかった、と両親には言っていたけれど、そうじゃない。

 会いたかったから、素直に嬉しいという気持ちがいくつも出てきたんだと思う。

 けれど、まただ。

 高校三年生の頃、東京に行く事になったと朝陽に聞かされ、卒業するまでのあの数ヶ月の苦しみがまた帰ってきた。

 じわじわと伝わってくるこの感情。これが恋心なんだと気が付くのに、さして時間もかからなかった。自覚してから、朝陽に気付かれないようにといつものように振る舞っていたけれど、いつも通り、が分からなくなってきていた。

 結局は朝陽にバレることなく卒業と同時に別れたけれど、また、その苦しみが帰ってきてしまった。

 これがバレたら、きっと離れていってしまう。私達の間に、溝が出来てしまう。

 それは、嫌だ。

 ただの仲の良い幼馴染。ただ、それだけでいい。朝陽には、変に思われたくない。

 楽しく笑い合っているだけで、それだけでいい。
< 16 / 36 >

この作品をシェア

pagetop