死んじゃうなら、その命くれない?
ep19:校外学習
待ちに待った校外学習の日がやってきた。学校の正門前の道路には、既に4台の観光バスが待機している。
「いやー、いい天気になって良かったなあ。昨日はワクワクしすぎて、あんま眠れなかったよ俺」
春人が眩しそうに太陽を睨みながら言う。
「ホント、春人ってそういうところガキっぽいよね。それより、悠真! さっさとバスに乗っちゃおう!」
彩奈に背中を押され、1号車のバスへと乗り込んでいく。私と彩奈の座席は隣同士。席ぎめの際、「悠真の隣は私!」という彩奈の一言で席が決まってしまったのだ。その時はまだ、仁が彩奈のことを好きだということを知らなかった。
バス運転手さんが挨拶を終え、目的地へとバスが動き出す。高速道路を経由しての約1時間の道程だ。
「先週はお邪魔させてもらってありがと。お父さんたちに、あのマンションに同級生が一人暮らししてるって言ったら、『凄い!』ってビックリしてたよ」
「まあ、一人暮らしはビックリするだろうね。でも、親の金で住まわせてもらってるだけで、俺自身は全然凄くないよ」
「またまたー。——そういや、悠真の親ってどんな感じなの? もし、答えにくい感じなら全然大丈夫なんだけど」
彩奈は少し気を使ったのか、そんな聞き方をしてきた。
「ああ……父親は海外で仕事してるんだ。こっちに転校してくるまでは、一緒に日本で暮らしてたんだけどさ。で、父が海外で仕事するって決まった時に、俺だけ日本に残ったって感じ。母親は俺が小さい頃に別れたらしくって、殆ど記憶にないかな」
「そうなんだ……だから、一人暮らしなんだね。——やっぱり、寂しかったりする?」
「うーん、そうでもないよ。父は日本で仕事してた頃から、殆ど家にいない人だったから」
「そっかー……私なんて、今でも親に甘えっぱなしだもんな。だから、悠真はしっかりしてるんだ」
親のことを突っ込んで聞かれないように、出来るだけ親とは疎遠ということにしておいた。春人からも同じ質問を受けたことがあるが、それ以上聞いてくることは無かった。
「あ、そうそう。キャンディ食べよっか」
話題を変えるつもりだったのか、彩奈はそう言った。眞白だった頃の私は、彩奈は気を使うタイプじゃないと思っていたのに。
彩奈が荷棚のバッグに手を伸ばした、その瞬間。バスが急停車し、体勢を崩した彼女は私の膝にストンと座り込んだ。
「ごっ、ごめん悠真!!」
彩奈は顔を真赤にして、慌てて自分の席へと座り直す。
「ハハハ! 彩奈、今のワザとだろ? やるなあホントに」
「わっ、ワザとじゃないわよ! 春人にはキャンディあげないから!」
彩奈はそう言って、後ろに座っている春人に向け「べー」っと舌を出した。
なんだろう、さっき感じた不思議な気持ちは……
彩奈が私の上に乗った瞬間、胸の鼓動が高鳴った。今まで女子に触れることがあっても、こんな気持ちになることなんて無かったのに。
もしかして、私は彩奈のことを好きになってきている……? それとも、心も体も少しずつ男性に近づいてきているのだろうか。
眞白が春人にドキドキしたように、私もまた、何かが変わり始めているのかもしれない。
「いやー、いい天気になって良かったなあ。昨日はワクワクしすぎて、あんま眠れなかったよ俺」
春人が眩しそうに太陽を睨みながら言う。
「ホント、春人ってそういうところガキっぽいよね。それより、悠真! さっさとバスに乗っちゃおう!」
彩奈に背中を押され、1号車のバスへと乗り込んでいく。私と彩奈の座席は隣同士。席ぎめの際、「悠真の隣は私!」という彩奈の一言で席が決まってしまったのだ。その時はまだ、仁が彩奈のことを好きだということを知らなかった。
バス運転手さんが挨拶を終え、目的地へとバスが動き出す。高速道路を経由しての約1時間の道程だ。
「先週はお邪魔させてもらってありがと。お父さんたちに、あのマンションに同級生が一人暮らししてるって言ったら、『凄い!』ってビックリしてたよ」
「まあ、一人暮らしはビックリするだろうね。でも、親の金で住まわせてもらってるだけで、俺自身は全然凄くないよ」
「またまたー。——そういや、悠真の親ってどんな感じなの? もし、答えにくい感じなら全然大丈夫なんだけど」
彩奈は少し気を使ったのか、そんな聞き方をしてきた。
「ああ……父親は海外で仕事してるんだ。こっちに転校してくるまでは、一緒に日本で暮らしてたんだけどさ。で、父が海外で仕事するって決まった時に、俺だけ日本に残ったって感じ。母親は俺が小さい頃に別れたらしくって、殆ど記憶にないかな」
「そうなんだ……だから、一人暮らしなんだね。——やっぱり、寂しかったりする?」
「うーん、そうでもないよ。父は日本で仕事してた頃から、殆ど家にいない人だったから」
「そっかー……私なんて、今でも親に甘えっぱなしだもんな。だから、悠真はしっかりしてるんだ」
親のことを突っ込んで聞かれないように、出来るだけ親とは疎遠ということにしておいた。春人からも同じ質問を受けたことがあるが、それ以上聞いてくることは無かった。
「あ、そうそう。キャンディ食べよっか」
話題を変えるつもりだったのか、彩奈はそう言った。眞白だった頃の私は、彩奈は気を使うタイプじゃないと思っていたのに。
彩奈が荷棚のバッグに手を伸ばした、その瞬間。バスが急停車し、体勢を崩した彼女は私の膝にストンと座り込んだ。
「ごっ、ごめん悠真!!」
彩奈は顔を真赤にして、慌てて自分の席へと座り直す。
「ハハハ! 彩奈、今のワザとだろ? やるなあホントに」
「わっ、ワザとじゃないわよ! 春人にはキャンディあげないから!」
彩奈はそう言って、後ろに座っている春人に向け「べー」っと舌を出した。
なんだろう、さっき感じた不思議な気持ちは……
彩奈が私の上に乗った瞬間、胸の鼓動が高鳴った。今まで女子に触れることがあっても、こんな気持ちになることなんて無かったのに。
もしかして、私は彩奈のことを好きになってきている……? それとも、心も体も少しずつ男性に近づいてきているのだろうか。
眞白が春人にドキドキしたように、私もまた、何かが変わり始めているのかもしれない。