嘘つきな天使
「彩未!大丈夫か!怪我はないか!!?」
天真が駆け寄ってきて、私は大きく頷いた。天真が来てくれたことで急に安心して私の目から思わず涙が溢れた。
ほ、ホントは怖かった。由佳の二の舞になるかと思った。
クリームで顔を真っ白にさせたショウはみっともなく後ろを振り返り
「何で……ボディーガードは……」と弱弱しく呟いた。
「あいつらは仲良くねんね中さ。お前も眠そうだな」天真が注射器のようなものを取り出す。どうやら天真は力技ではなく何の薬剤が入っているのか分からないが、この注射器で外の二人を眠らせたようだ。天真は私の肩を抱きながら片手の関節をボキボキと鳴らす。
「お、お前ら何者……まさか警察……」ショウが震える指で私たちを指さし。
「ざんね~ん、サツじゃねぇよ」と天真が中指を立てる。(←良い子の皆様は絶対に真似してはいけません)
「この野郎!俺をコケにしやがって!」とショウが飛び上がった。
天真は素早く宙を見上げると
「彩未!ジャンプだ!カーテンのバーに掴まれ!そしてキックだ」
そ、そう言われても!
と思ってもやるしかない。
天真に言われるまままその場でジャンプして何とかカーテンのバーにつかまると、
「せーの!」と言う天真の掛け声とともに私は懇親の力でキックをショウにかました。二人同時にキックをかました天真と私、二人の蹴りでショウは再びみっともなく後ろにひっくり返った。今度こそ相当な威力だったに違いない。ショウの手はぴくりとも動かなかった。
やった!?
その時だった。
「警察だ!風営法違反及び、暴行の現行犯で逮捕する!」と西園寺刑事さんが飛び込んできた。
部屋の外では男と女の叫び声が入り交じり「お前らこれが違法なクラブだと分かってるのか!」と恐らく西園寺刑事さんのお仲間だと思われる刑事さんの怒号も飛び交っていった。
「天真!お前らも行け!このまままじゃ過剰防衛とみなされる!」と西園寺刑事さんに言われて
か、過剰防衛!?そこまで考えてなかった。
だけど部屋の外では刑事さんたちがいるし逃げ惑う男女でパニック状態だ。
天真はさっと部屋を見渡し、
「窓がある。彩未!腕をクロスにして飛び込むぞ!」
「え!飛び込むってあの窓に!」
「大丈夫だ!この真下はゴミ運搬のワゴンがある!」との言葉に息を呑んだ。
でもそこしか逃げ道がないことは私も分かった。
「二人なら飛べるだろ?俺たちは」
そう、二人ならどこへだって飛んでいける。
何とか頷き、そうだ、由佳が動画で撮影されたって言う記録があのビデオに残ってるかもしれない。私は転がったハンディタイプのビデオをクラッチバッグに仕舞い入れると、
「行くぞ!」天真の掛け声で「1、2、3!」と合図で天真に言われた通り腕を交差してガラスの窓に突っ込んだ。